大学執行部リレーコラム

卒業研究とホームセンター

2021.08.05

副学長 高橋智幸

 私の研究室の学生はコンピュータシミュレーションばかりしていると思われがちだが、実は実験を選択する学生も多い。今年度に配属された3回生は4人だが、2人は実験を希望しており、そのうちの1人はダムの排砂実験をやりたいと言ってきた。ダムに水が流れ込む際、一緒に土砂も入ってきて底に溜まる。堆積した土砂はダムの治水・利水機能を低下させるため、効率よく排砂する方法を実験で調べたいそうだ。
 本実験に入る前に、学生には予備実験を行ってもらう。実験装置は学生自身が構造を考え、部品を揃え、製作しなくてはならないが、部品を探す強い味方は近所のホームセンターだ。ちょうど良い部品などはホームセンターに置いていないので、学生は想像力を働かせて、実験装置の部品になりそうなものを探し回ることになる。
 なんとか部品(になりそうなもの)をかき集めて試作機を完成させ、予備実験を始める。しかし、次から次へと様々な問題が発生して、思ったように実験は進まない。ここが実験の面白いところであり、重要なところでもある。問題を分析し、原因を探り、改善方法を検討する。そして、またホームセンターをうろうろして、試作機を改良できそうな部品を探す。多くの卒業生はこのプロセスを繰り返して、課題解決能力を高めてきた。案の定、今年の学生もだいぶ苦労しているようだ。
 先日のゼミで、「今は予備予備実験中です!」と学生が言い始めた。「予備」が1回増えているが、これは実験の難しさがわかってきた証拠であろう。



研究室の学生が考えたダムの排砂実験と予備実験装置(ゼミ発表資料より)
研究室の学生が考えたダムの排砂実験と予備実験装置(ゼミ発表資料より)