KANDAI
TOPICS日常の出来事
千里山キャンパスのイノベーション創生センターで19日、同施設の入居企業である株式会社イノカ(本社:東京都文京区/以下、「イノカ」という。)CEOの高倉葉太氏と化学生命工学部の上田正人教授(2022年からイノカCTO=Chief Technology Officer)を講師に迎え、「『好き』から自分のパッションを見つける~起業とスタートアップのリアルな挑戦~」と題したセミナーを開催し、起業や社会課題に関心のある博士課程の大学院生を中心に約20人が参加しました。
高倉氏は東京大学工学部を卒業後、同大学院での研究を経て2019年にイノカを設立。同社は、海をはじめとする水域の自然環境を陸地に再現する「環境移送技術®」の研究開発および社会実装を推進するベンチャー企業として事業を展開しています。上田教授は金属・セラミックの研究を専門としていますが、イノカの事業に賛同して同社のCTOに就任しました。
「なぜみなさんは博士課程に進もうとしたのか」と、本題に入る前に参加者へ問いかけた高倉氏。起業にも研究にも取り組みたい学生に対し、「アントレプレナーシップ」と「研究」の両方を必ずしもひとりで持ち合わせる必要はなく、一方に特化した者同士が協働することも可能と言い、ビジネスと研究の両立について示唆を与えました。
高倉氏は自身の生い立ちや、周囲から注目されることを好んだ中学生時代に趣味でアクアリウムづくりを始めたエピソードなどを紹介。大学では工学部でものづくりを深く学び、そのころ出会った恩師から「本当に好きなものは?」と聞かれ、"好きなこと=サンゴや海の環境"をビジネスにつなげるきっかけになったことにも触れました。その後、紆余曲折を経て起業に至り、「"環境"という言葉から多くの人がイメージする"緑"だけでなく、"青"の環境を大切にして活用することで社会を元気にしたい」という想いを持ち、現在は他企業とも連携しながら同社の独自技術を幅広い年齢の教育現場に生かす活動にも力を入れていることを話しました。
「研究を離れていろんなことをやりたい」というチャレンジ精神旺盛な高倉氏は、参加した学生に対しても「専門ではないこともどんどん学びにいってほしい」とエールを贈りました。
一方、人工骨の開発など生体・人工材料界面の研究を専門とする上田教授は自身の研究内容を紹介し、イノカとの出会いからサンゴの研究を行うようになった経緯や、サンゴとヒトの骨格形成に類似性を見いだし現在はサンゴの研究に注力していることなどを語りました。専門分野での起業に関しては、「自身で会社を立ち上げるつもりだったが、既に(サンゴを飼育する)しくみを持っている既存の会社に参画することで自身の研究をいち早く世の中に出せる」と、技術者としてイノカに加わった動機を述べました。
また、参加した学生と同じように博士課程で学びを修めた研究者として、「それぞれの分野で研究を続けるみなさんに、このような進み方もあるということを知ってほしい」と、上田教授自身の歩みをひとつのモデルとして学生に伝えました。
講演の後は、個人およびグループワーク・発表、質疑応答へと移行。研究を続けながら起業を志す学生に対して、自身が学生時代に研究会への参加など積極的に外に出て今日につながる人との出会いを得たことから、「みなさんも動きを止めないように」と上田教授。「企業の利益と顧客満足の両立」について尋ねられると高倉氏は、1杯のコーヒーの価値を例に挙げながら「顧客が何に価値を感じて対価を払うのかを考えることが基本」「売って終わりでなくいかに長く付き合うか、(事業が)持続可能であるかが大切」とビジネスの秘訣を語りました。
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