博物館開設30周年を迎えて
日本における大学博物館の祖は、明治10年代に開設された帝国大学理学部博物場とされています。そこからおよそ150年余、現代では全国の150以上の大学に200館(園)以上*1の博物館等の相当・類似施設があると言われるまでに増え続けています。
本学では、1961年に大学において博物館学課程を開設し、その13年後の1974年には、関西大学博物館の前身である考古学等資料室が設置されました。その後時は過ぎ、博物館法(1952年制定)による「博物館相当施設」としての認定を受け、本学に『博物館』が開設されたのが、今からちょうど30年前の1994年4月のことでありました*2。
本学博物館開設の2年後となる1996年に、文部省学術審議会学術情報資料分科会によって「ユニバーシティ・ミュージアムの設置について」が報告されたことを受けて、全国の大学で博物館の開設が一斉に進められることになりました。このことからも、本学の博物館が全国における大学博物館として先んじた存在であったというのはいうまでもありません。また、この報告では、『ユニバーシティ・ミュージアム』設置の必要性を説く中で、ユニバーシティ・ミュージアムは単なる学術標本保存施設又は収集した学術標本の展示を主たる目的とする施設ではなく、(1)収集・整理・保存、(2)情報提供、(3)公開・展示、(4)研究、(5)教育の各機能を持つ必要があると訴えかけています。
今日において、関西大学博物館は研究班を持ち、講演会やシンポジウム等を開催し、研究成果等を広く公開する彙報や紀要を発行しています。教育面においては、『博物館実習』の科目運営の一端を担い、学芸員養成教育や『学芸員インターンシップ』などにも寄与しています。また、地域社会への貢献という面では、資料等の収集・展示を行うだけでなく、講演会や研修会、子ども向けのイベントなども例年実施しています。
30年の長きにわたり、博物館を運営し続けられたことは、一重に年間10,000名前後におよぶ利用者の皆様のおかげと感謝しております。この祝賀の年を記念いたしまして、本年度に以下のような事業を計画いたしましたので、お立ち寄りいただければ幸いでございます。今後も、50年100年と年を重ね、ますますの発展を目指してまいりますので、本学博物館の活動にご期待いただきますようお願い申し上げます。
関西大学博物館
*1
『博物館』には通常植物園や資料館等も含めるが、大学博物館相当・類似施設には、ギャラリーや展示コーナーのような小規模の施設(設備)等もあり、その捉え方や資料や標本が非公開なこともあるため、対象範囲があいまいでカウントは調査によって様々である。
*2
当時、関西では博物館を持つ大学はほんのわずかであった。1994年の設立時、関西には大阪音楽大学に楽器博物館(現在の音楽メディアセンター・楽器音楽資料館)や、1992年開設の立命館大学国際平和ミュージアムが存在していたぐらいで、2001年開設の京都大学総合博物館は前身の文学部博物館であり、大阪大学総合学術博物館も2002年開設である。
文学部創設100周年・博物館開設30周年記念連携企画展
「花開く大阪の文化」
連携企画展に伴う記念講演会
テーマ:「百舌鳥・古市古墳群の調査・研究の歩み」
テーマ:「大坂の古典学 契沖・宣長から岩崎美隆へ」
博物館開設30周年記念講演会(ミュージアム講座)
統一テーマ:『歴史研究と現代の博物館の役割』
博物館ホームページのリニューアル(2025年1月頃リリース)
博物館開設30周年記念特設ページ(リリース済)
記念グッズの製作
1954年4月
博物館構想のもと、当時の図書館(現在の簡文館)3階の末永雅雄教授(のち名誉教授)研究室隣の小部屋で、考古資料の一部を展示
大阪毎日新聞社元社長 本山彦一氏蒐集品(本山コレクション)の搬入開始
1961年
大学に博物館学課程を開設
1972年
高松塚古墳の発掘調査
発掘は、当時の末永雅雄橿原考古学研究所長(関西大学名誉教授)の指導のもと、網干善教関西大学助教授(のち名誉教授)が担当し、関西大学考古学研究室の学生・大学院生などが参加
1974年
大学院学舎改築を機に、その4階に「関西大学文学部考古学等資料室」を設置
1985年
関西大学総合図書館の新築にともなって旧図書館が簡文館と命名され、考古学等資料室が簡文館に移り、展示室(第1、第2)、資料収蔵庫、実習室などを設置
1994年4月
博物館法の「博物館相当施設」として簡文館に『関西大学博物館』が開設(初代博物館長は、網干善教教授)
1996年1月
文部省学術審議会学術情報資料分科会が「ユニバーシティ・ミュージアムの設置について」を報告
2003年8月
第1回なんでも相談会を開催
2004年4月
博物館開設10周年記念企画展「関西大学博物館の名品」を開催
2005年4月
なにわ・大阪文化遺産学研究センター(現在のなにわ大阪研究センター)を設立
2006年10月
年史資料展示室を開設
2007年7月
簡文館が国の「登録有形文化財(建造物)」として登録
2007年9月
北大阪ミュージアム・ネットワークに参画
2008年3月
簡文館前に「高松塚古墳壁画再現展示室」を設置
2011年3月
博物館が所蔵する本山コレクションの全資料が、「登録有形文化財(美術工芸部門)」として登録
2011年4月
関西大学博物館学課程創設50周年記念講演会「博物館学受講の思い出―学芸員生活での利点―」を開催
2011年7月
簡文館の耐震改修工事を実施
2013年7月
かんさい・大学ミュージアムネットワーク設立
2014年4月
図書館創設100周年・博物館開設20周年連携企画展「関西大学名品万華鏡―館館選イチオシ!―」を開催
第1展示室を特別展示室として大型展示ケースを設置
2014年8月
第11回キッズミュージアム(旧称 なんでも相談会)を開催
2018年3月
簡文館が「大阪府指定有形文化財(建造物)」として登録
2024年4月
博物館が開設30周年を迎える
なにわ大阪研究センターと統合
文学部創立100周年・博物館開設30周年連携企画展「花開く大阪の文化」を開催
博物館長(歴代) | |
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氏名 | 在任期間 |
網干 善教 | 1994(平成6)年4月1日〜1998(平成10)年3月31日 |
薗田 香融 | 1998(平成10)年4月1日〜1999(平成11)年3月31日 |
上井 久義 | 1999(平成11)年4月1日〜2002(平成14)年3月31日 |
髙橋 隆博 | 2002(平成14)年4月1日〜2012(平成24)年3月31日 |
藪田 貫 | 2012(平成24)年4月1日〜2015(平成27)年3月31日 |
長谷 洋一 | 2015(平成27)年4月1日〜2016(平成28)年9月30日 |
米田 文孝 | 2016(平成28)年10月1日〜2020(令和2)年9月30日 |
西本 昌弘 | 2020(令和2)年10月1日〜2022(令和4)年3月31日 |
原田 正俊 | 2022(令和4)年4月1日〜現 在 |
副館長(なにわ大阪研究センター長) | |
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氏名 | 在任期間 |
林 武文 | 2024(令和6)年4月1日〜現 在 |