第128冊 IT革命下における制度の構築と変容 (2002.3.31)

I E-コマース時代の保護対策
―認証問題と個人情報保護―
山本慶介 研究員
II 行政情報に関する法的諸問題 亀田健二 研究員
III インターネット電子投票制度の諸問題
―フランスの動向を手がかりに―
村田尚紀 研究員
IV サイバースペースにおける選挙
―2001年参院選挙候補者データによる分析―
岡本哲和 研究員
V コミュニケーションの視点に関する一考察 常木暎生 研究員
VI 文化・科学技術行政におけるミュージアムの情報化と展開方向
―地域資源としてのミュージアムの活用方向―
高橋 徹 委嘱研究員
VII 日本における情報化過程の検証
―その初期導入期を回顧しつつ―
小林宏一(東京大学教授)

要約

本研究は、IT (Information Technology) が普及してきた段階における諸相をさまざまな角度から取り扱い、新制度の萌芽をいちはやく考察しようとする試みである。

ITの影響は歴史的評価がすでに定まった「革命」ではなく、マルチメディアの普及の結果生じている制度的な変容であり、それに応じてこれまでのやり方から電子機器を使用したやり方に徐々に変わって行く、という冷静な視点が必要である。つまり、静かに進行するイノベーション(革新)と考えた方がよい。

ここで取り上げた各研究員の諸論では、従来のやり方(制度)がITの普及や活用によってどのように革新されていくかが研究され、多方面に展開するIT技術による革新の有り様が分析されている。こうした研究は地道ではあるが、IT技術がもたらす、新制度の構築や旧制度の変容を予測する上で必要不可欠なものである。

第127冊 経済システム改革と会計制度III (2002.3.31)

I ビジネスレポーティングと利用者の情報要求
―ICASの調査を中心にして―
笹倉淳史 研究員
II 政府会計における改革の論点
―イギリスの資源会計・予算とベスト・バリューに学ぶこと―
柴 健次 研究員
III 有価証券届出書におけるリスク情報の経緯とその記載内容 小谷 融 委嘱研究員
IV 環境会計の制度と機能 須田一幸 研究員
V 社会経済システムの行方
―フォーマルなシステムからトータルなシステムへ
竹下公視 研究員

要約

本研究双書は、「経済システムの変革と国際化」というテーマですすめてきた4年間の共同研究の成果である。掲載された各章(論文)の内容は次の通りである。

第1章(笹倉論文)は、ビジネスレポーティングに関する情報利用者の情報要求を整理・検討し、将来情報や非財務的情報などの提供が今後要求されることを指摘している。第2章(柴論文)は、イギリス労働党政権が推進する政府サービス改善運動を会計の観点から考察し、わが国で会計・予算制度の改革を進めるための論点を提示している。第3章(小谷論文)は、証券市場において個人投資家が積極的に投資を行うための前提となる「リスク情報」の開示制度について、その経緯と現状を整理・検討し、問題点を指摘している。第4章(須田論文)は、米国における環境会計情報の開示が証券市場に与える影響に関する実証研究を踏まえて、わが国の環境会計についてのあり方についての明確な方向を提示している。最後の第5章(竹下論文)は、4章までと視点を変えて「経済システム(の変革)」そのものを捉えようとしたもので、社会経済システムをフォーマル、インフォーマルなシステムをともに含む「重層的なトータルシステム」として捉えることの重要性を指摘している。