第120冊 情報行政問題研究II (2000.3.31)

I 環境情報の公開 亀田健二 研究員
II カナダにおける民間部門の個人情報保護
―インターネット・サービス・プロバイダーを中心として―
山本慶介 研究員
III 政府再生と電子政府における環境情報の電子的な提供と報告 比山節男 研究員
IV 省庁内部組織と情報 建林正彦 研究員
V 地域情報化における市民
―情報化とコミュニケーション行動に関する実証的研究―
常木暎生 研究員
VI 離島の情報化と観光化に関する一考察
―長崎県福江市・福江島の訪問調査メモから―
眞鍋俊二 研究員

要約

情報行政問題研究は、本冊子を公表するに当たって具体的で新しい視座を求められている。それは、情報の公開と処理について、とり扱う情報の性質ととり扱う組織との関係を明確にすることである。

本書のテーマは、(1) 環境問題と電子政府 (2) 個人情報保護と民間企業体 (3) 行政内部情報と行政組織 (4) コミュニティ情報と市民 (5) 地域情報と地域振興といった前述の関係を主に取上げ分析した。それぞれのテーマはいずれも情報行政が問題視するテーマであり、具体的な問題設定と提案を行ったことは意義深いものであると考えている。

第119冊 経済システム改革と会計制度 (2000.3.31)

T 時代の動向と社会経済システムの変革
―科学技術と社会科学の転換―
竹下公視 研究員
II 経営者報酬システムと財務会計 須田一幸 研究員
III 環境会計ディスクロージャーの動向 松尾聿正 研究員
IV 会計基準設定機関はどうあるべきか 小谷 融 委嘱研究員
V わが国における地方自治体の貸借対照表導入問題 柴 健次 研究員
VI 有機的システムの安定性と経済 (1) 藤澤 等 委嘱研究員

要約

いま、日本の金融システムと企業会計システムは激しく変化しており、いずれも国際化を標榜にしてシステム改革が進められている。しかし両システムは、もともと日本の経済と社会に適したものであり、合理的な仕組みであったのかもしれない。どこに問題があって変革しなければならなかったのか。あるいは、国際化に向けたシステム改革で、どのようなコストとベネフィットが発生するのか。

このような問いに答えるには、第1にシステムの概念を整理し、社会経済システムに内包された一般的な問題点を明らかにする必要があろう。藤澤論文と竹下論文は、この視点から分析をしている。第2にシステムの役割を明確にし、たとえば会計システムが企業でどのように活用されているのかを検討すべきであろう。須田論文は、この観点で分析を試みた。

第3に、システム変革の意義を考察しなければならない。たとえば、ディスクロージャー・システムの改革と環境保全の関係を研究する方向が考えられる。松尾論文は、この視点で分析をしている。第4に、システムはどのように改革されるべきか、ということが問題になる。小谷論文は、企業会計システムの設計のあり方を考察した。柴論文は地方自治体の会計システムのあり方を分析している。

第118冊 ビッグバン時代の大学論 ―情報化の新たな局面を念頭におきつつ― (2000.3.31)

要約

グローバル化・情報化を主たる内容として巨大な変化を遂げつつある現代にあって、大学という存在もまた「大学のビッグバン」というほどに根本的な変革を迫られている。ところで、「大学の大衆化」についていえば、この間の極めて特徴的な側面であったが、一方では大学の発展として肯定的に把握できるが、他方では単なる量的膨張として否定的にも理解されよう。こうした状況のなかで、本書では、当面のより実践的・具体的な対応措置について若干の提案がなされている。また、とくに「情報化」のもつ革命的意義に注目し、「情報化」の趨性が大学の目的・組織・主体の存在態様に与える影響についても問題提起を行っている。なお、本書では、変革の時期にあっては、ある種の必然性をもって露出することとなる後進的局面にも触れているが、大学全体としての自己批判的な観点からのさらなる議論を要するところであろう。

第117冊 中国農村の開発戦略―農村は「豊か」になったのか― (2000.3.31)

要約

本書は三部構成からなり、第一部では中国農村経済の基底構造について分析した。つまり、1949年革命で権力を握った中国共産党は負の歴史遺産を継承して社会主義建設に取り組まねばならず、中国社会主義の実態は理想と大きく乖離し、社会経済構造は歪められてきたことを分析した。第二部では中国農村での調査経験からその調査方法を総括し、北京や上海、福建安渓・普江、四川成都などの農村における家族経済、経済改革と通婚圏、社会主義建設と同族結合、農民企業と労働力移動、農村開発について実態調査を通じて分析した。第三部は中華人民共和国成立以降の開発戦略の問題点について考察した。つまり、中国の開発戦略は農業を犠牲にして重工業化を行い、集団経済と戸籍制度の下で農民を農村に縛ってきたが、改革開放後の経済政策も基本的に変化がなく、農村・農民は見捨てられ、経済格差や社会秩序の乱れ、環境破壊などの諸矛盾が拡大した。そこで、結論として従来の工業化政策から内陸・農業重視の経済政策へ転換する重要性を考察した。

第116冊 日米ソ自動車工業の一断面 (1999. 6.30)

要約

今日、自動車産業界を筆頭にして業種・業態、国境、さらには従来の資本関係や系列の枠組を飛び越えた合併・買収、資本参加、戦略提携、合従連衡などが大々的かつ猛烈なスピードで進行中である。世界単一市場、ボーダーレス・エコノミー、グローカライゼーション(グローバリゼーションとローカライゼーションの合成語)、メカ・コンペティションなどの言葉に代表されるように、世界の巨大企業は、文字通り、全地球的規模でビジネスを展開している。

以上のような現状を踏まえて、本書では日本の自動車業界について、ソ連(崩壊する前)の新聞記者の目にどのように映じたか、経営戦略の失敗から海外での生産活動からの撤退を余儀なくされた日産自動車、旧ビッグ・スリーの組織戦略、海外戦略、買収戦略と売却戦略、さらには致命的なほど遅れているソ連の自動車事情などについて、歴史的・実証的、そして個別的に分析した。