第94号 東大阪市中小企業10年の軌跡 (1999. 3.31)

要約

執筆者は過去10 年以上にわたって東大阪の中小企業調査に係わってきている。毎年その内容を実習報告書として纏めている。東大阪の中小企業はいま内外の厳しい経済環境に直面してその存在基盤が揺れている。そこで、今まで単年度で分析された報告書を時系列的に分析するための試みの一歩として10年間の分析資料のみを掲載した資料集を刊行した。この資料を用いた時系列的分析は今後行う予定である。

第93号  簡易型Webデータベースの開発 ―大田区製造業実態調査票入力システム― (1999.3.31)

要約

関西大学経済・政治研究所グローバリゼーション・リスク研究班とアジア経済研究所グローバリゼーションとアジアのビジネス・ネットワーク研究会が東京商工会議所大田支部より受託した「大田区製造業実態調査」の一環として行われたアンケート調査で回収された調査票の入力作業にあたって、簡易型Webデータベースシステムの開発を行った。本システムは、入力作業者にパソコン初心者が多いこと、比較的小規模であること、セキュリティ確保の必要性等の条件を勘案した結果、ファイルメーカーPro4.0によってWebデータベースシステムとして開発された。これは、ファイルメーカーを使ったWebデータベースシステムは、構造がシンプルで、データベースとフォーマットファイルの設計だけで構築できるので、比較的容易に構築できると判断したためである。実際、エンドユーザにとっては比較的わかりやすい(パソコン初心者にも扱える)Webブラウザのインターフェースを使った入力システムを比較的容易に構築することができた。本システムを使った入力作業は極めて順調に進んだことが採取されたデータからも裏付けられている。したがって、本システムの開発にファイルメーカーによるWebデータベースシステムを採用したことは、比較的小規模な社会調査にありがちな制約条件の下で最適な選択の一つであったと考えられる。

第92号 植民地都市の社交ダンス(資料集) ―大連での勃興期を中心に― (1999.3.31)

要約

資料集では、研究班の一員として1995年度から1998年度のあいだに収集した資料の一部を公開した。近代以降の都市大衆文化の担い手たちがいかなるネットワークを形成し、そのネットワークが大衆文化のどのような特徴と関連するのかなどについて解明を進めるのが本研究班での作業であった。具体的には、音楽やダンスといった娯楽の領域において欧米の文物に強い影響を受けた人びとが、それらを日本の都市文化のなかに定着させていった経緯を伝える資料群である。また、今回の作業では、戦前期の植民地支配の根拠とされた大連(中国遼寧省)という特殊な歴史的経緯をもつ都市についての事例を対象とした。

編集にあたっては、戦前期の大連に居住した人びとの協力を得ながら、『満州日報』『満州日日新聞』にみられる関連記事の復刻・解説を中心に据え、当時の雑誌広告や記事、関係者からの聞き取りのまとめなどを適宜盛りこんだ。

第91号  「盲人保護法案」に関する帝国議会資料(1905年〜1914年) ―視覚障害者による「あんま専業運動」― (1999.3.31)

要約

「組織とネットワーク」研究班(幹事:片桐新自・研究期間:1995 年4月〜1999年3月)では、情報環境および社会関係における近年の変化を踏まえて、集団概念の再検討を試みてきた。特に焦点となったのは、メディアを通してのネットワークとボランティア組織のネットワークである。筆者(杉野)は後者の研究テーマを分担し、主として障害者による当事者運動を事例としてその組織特性とネットワーク特性について検討した。そうした当事者運動の事例の一つとしてとりあげたものが、視覚障害者による「あんま専業運動」である。この運動はわが国の障害者運動の古典的事例と呼べるものであり、障害者運動研究のみならず多くの研究者によって参照されるべき事例である。にもかかわらず、これまで参照に便利な資料がきわめて不足していた。本資料は、そうした研究上の不便を解消する目的で、1905年から1914年までの帝国議会議事録に掲載された「あんま専業運動」に関する記事を抜粋したものである。