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【関大社会安全学部 リレーコラム】振り返るべきこと
能登半島地震からおよそ1月半がたちました。これまでの報道によると、家屋の倒壊による死者が数多く発生しているようです。振り返ると、平成7年の兵庫県南部地震(阪神大震災)や昨年のトルコ・シリア地震でも、家屋の倒壊による死者が多数にのぼっています。
前回のコラムで、危険なブロック塀の話を書きましたが、ブロック塀に限らず、危険な家屋も数多く残っているということだと思います。危険な家屋が残っている理由として、さまざまなことが考えられます。
今回の能登地震に関しては、これまでの比較的小規模な地震によって家屋が損傷を受けていた可能性が指摘されています。また、高齢化している地域であったことも理由の一つかもしれません。
日本は新築志向が強く、住宅の平均利用期間は30年程度といわれています。これは家屋をあまり大事にしていないという問題に見えますが、更新の際に最新の設計基準に適合した耐震性の高い建物になるため、安全に寄与しているとも考えられます。
しかし、高齢化した地域では、リフォームや建て替えにつながる家族構成の変化も少なく、耐震補強の機会を逃して、古い家屋を使い続ける人が多いと考えられます。この結果、最新の耐震技術が反映されないことに加え、家屋自体の劣化の問題も生じます。
一方で、技術の発展が被害軽減に貢献していた可能性もあります。例えば、今回の地震では、現在でも1万人以上の方が避難しています。どのような状況で避難されているのかは、さまざまだと思いますが、家屋が多少の被害を受けても、多くの方が生き残ることができたと解釈できます。
つまり、今回のような大きな揺れに対しては、最新の設計基準でも、多少の損傷を許容しつつ、家屋が倒壊しないことを目標としています。したがって、残念ながら多くの死者が出てしまいましたが、昔よりは死者を減らすことができているのかもしれません。
まだ1月半ですので、今は被災者の支援に全力を尽くす時期です。しかし、いずれは上記のような観点で今回の地震被害を振り返ることが必要です。
(関西大学社会安全学部教授 一井康二)(2024-02-19・大阪夕刊・国際・3社掲載)