【関大社会安全学部 リレーコラム】能登地震の災害関連死を防ぐには

元日に発生した能登半島地震から10日以上が経過しました。石川県によると、確認されている災害関連死は10人(12日現在)です。この人数は、今回の規模の災害(最大避難者5万人)としては非常に多いといえます。
犠牲者の親族が役場に申告する余裕がないケースなどもあるため、今後申告が進めば、さらに多くの災害関連死が明らかになってくるでしょう。
そして東日本大震災といった過去の災害を踏まえれば、今後も災害関連死は避けられません。これをいかに減らしていけるか、今まさに正念場です。
まず大前提として、被災者を取り巻く環境の深刻さは、連続的に変化するものではないことを理解する必要があります。そして今、見極めが重要になっている不連続点があります。それは外部から支援を投入して死亡率を下げられるレベルの深刻さと、被災者に被災地外に一時的に退避してもらわなければ死亡率を下げられないレベルの深刻さとの間です。
後者の段階にある地域に対して、どれだけ前者の地域に有効な対策を充実させても死亡率は下がりません。前述したように、今回の関連死の多さを踏まえれば、一部地域で後者のような状況に陥っている可能性があります。
住み慣れた土地を離れることには不安が伴います。離れても故郷の状況や生活再建に向けた情報が伝わること、復興に向けた住民同士の話し合いに参加できること、さらにどの程度の期間で戻れるか見通しを示すことなどが求められます。
他方、外部から支援を充実させて死亡率を下げられるレベルの地域に関しては、被災者を取り巻く環境を改善するためにあらゆる手立てを講じる必要があります。災害関連死は、呼吸器系や循環器系の疾患などさまざまな要因がありますが、それらを事前に知ることはできません。
また、死亡に至るプロセスも非常に複雑です。しかしながらトイレ環境の改善、温かい食事の提供、寒さ対策など高度な医療技術がなくてもできることがたくさんあります。
避難所や自宅、高齢者施設など被災者のあらゆる生活拠点で、それらの対策を充実させなければなりません。
(関西大学社会安全学部教授 奥村与志弘)(2024-01-15・大阪夕刊・国際・3社掲載)