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【関大社会安全学部 リレーコラム】揺れなくても津波予報 避難を
また珍しいタイプの津波が発生しました。9日早朝に鳥島近海で発生したとされる津波です。連休最終日の静かで穏やかな朝の雰囲気とは対照的な、テレビニュースのアナウンサーの緊張感漂う雰囲気に驚かれた読者も多かったのではないでしょうか。
伊豆諸島や四国、九州などで20~60センチの津波が観測され、津波注意報も発表されました。ビーチや港などでは生死に関わる大変危険な津波で、注意報という言葉に油断されていた方はこれを機会に認識を改めていただけたらと思います。
震度1以上の地震は観測されておらず、気象庁は緊急記者会見で「原因不明」との認識を明らかにしました。今回の津波が珍しいタイプであることは間違いありませんが、冒頭に「また」と記した通り私たちの意表を突くような津波が発生することは珍しくありません。
例えば昨年1月に南太平洋の島国トンガで発生した津波は日本にも来襲しましたが、これは火山活動に伴う大気波動が原因の非常に珍しいタイプの津波でした。
東日本大震災の津波も数千年に一度と言われるような規模の地震が原因の極めて珍しいタイプ。他にも1993年北海道南西沖地震津波や、1960年チリ津波、1896年明治三陸大津波なども大変個性的です。
南海トラフ沿いで繰り返し発生してきた過去の津波にもそれぞれ強い個性があります。昭和東南海地震と昭和南海地震は2年の間を空けて発生し、1854年の安政東海地震と安政南海地震は30時間の間隔で起きました。また、1707年の宝永地震はプレート境界の東部と西部が同時に動き、巨大な津波を発生させました。さらに、1605年の慶長地震は地震に伴う揺れが小さいにもかかわらず、巨大津波が発生した可能性があると指摘されています。
このように見ていくと珍しくない津波とは何なのかがよく分からなくなってきます。きっと次の南海トラフ沿いで発生する津波も珍しいタイプのものになることでしょう。
つまり、過去のどのタイプの津波とも異なる特徴を持っていて、また政府が想定しているような津波とも異なる顔を持っているはずです。
しかし、どのような個性を持っていようとも動揺する必要はありません。揺れの有無に関係なく津波予警報が発表されれば避難をすること、津波予警報が発表されなくても長い揺れを感じたら避難をすればよいのです。
(関西大学社会安全学部教授 奥村与志弘)(2023-10-16・大阪夕刊・国際・3社掲載)