東日本大震災緊急シンポジウム:安部誠治 教授の講演概要を掲載しました

3/30(水)に関西大学高槻ミューズキャンパスで開催する「東日本大震災に関するシンポジウム」におけるパネリストからの講演概要(各テーマごと)を掲載します。
講演概要は開催当日までに1日1テーマを予定に更新していきます。

④ 「 ライフラインの被害とその影響 」 安部誠治 教授

地震発生から15日がたった3月26日21時現在、警察庁緊急災害警備本部によれば、死者1万489人、行方不明1万6,621人と東日本大震災による被害は深刻度を増している。
私たちは日常生活を営む上で、水道、電気、ガス、下水道、交通、通信手段などを必要とする。これらをライフラインという。ライフラインは、ネットワーク状に整備された設備・施設を持つ、国民生活や経済活動を支える装置体系である。
地震は、こうしたライフラインの設備・施設を破壊する。そのため、地震が発生すると、被災地では水道や電気、ガスなどの供給が途絶えてしまい、「飲み水がない」「トイレが使えない」「風呂に入れない」「暖房が使えない」など被災者の生活を一層過酷なものにしてしまう。過酷な避難生活が続くと、二次災害ともいえる「震災関連死」(1995年の阪神・淡路大震災では900人を超える震災関連死が発生)を誘発し、さらに震災の被害を拡大してしまう。ライフラインの機能停止は、また、被災地の救援・復旧作業にも支障をもたらす。
今回の大震災では、これまでと同様に水道、ガス、電気などが甚大な被害を受けたが、それに加えて、とくに人の移動と物資の輸送を担う交通に重大な問題が生じている。
交通機関は、①道路や鉄道、空港、港などのインフラ施設、②自動車や列車、飛行機、船舶などの乗り物、③乗り物の燃料、④乗り物を操作・運転する人間、の四つがそろっていなければ動かすことはできない。阪神・淡路大震災の際にも、交通のインフラ施設は大きな被害を受け、長期間にわたって交通網が寸断されたが、そのときと比較して今回の際立った特徴(3月27日現在)は、インフラ施設の損壊もさることながら、燃料不足によってトラックや乗用車が動けないという事態が生じていることである。そのため、必要な物資が被災地へ届かない、救援・支援者の移動や被災者自身の移動が大きく制約されるなどの問題が深刻化している。
燃料不足が深刻になっているのは、精油所の被災や供給ルートの途絶、そしてガソリンスタンドなどに貯蔵されていた燃料が使い切られてしまって、一時的に需給のアンバランスが生じているためである。これを解消するためには、すでに始まっているが、不足している燃料を被災地へ送り込むことで需給のアンバランスを是正することである。その際、被災エリアが東日本の太平洋沿岸全域と広域化しているため、きめ細かな供給ルートの再構築という点に留意する必要がある。 
【その他の講演概要】
① 「 原子力発電所の被災とその影響 」小澤守 教授
② 「 巨大複合災害としての東北・関東大震災 」 河田惠昭 教授
③ 「 マクロ経済への影響と経済復興 」 永松伸吾 准教授