夏休みの工作

執筆担当: 林ゼミ4回生 新井友貴

私は鉄道写真を趣味にしています。大学入学以降は毎年の長期休みに海外遠征へ行くことを楽しみに過ごしていました。これまでカザフスタン、モルドバ、フィンランドなどを訪問し、今夏はチリとボリビアに行くつもりで航空券の予約も済ませていたのですが、新型コロナウィルス感染症の世界的まん延で海外遠征はお預けとなりました。

その代わりにできることを考えて、今年の夏休みは「次の地震への備え」というテーマで模型を作ることにしました。阪神・淡路大震災以降、街には地震対策をしている構造物がはかなり増えているのですが、意識して見ないと気がつきません。そういう補強工事の数々を模型にして伝えようということです。ゼミの林先生と相談して、東海道新幹線の1:150スケールのジオラマ作りと決まりました。

作成したジオラマは2台で、一つは高架橋、もう一つは盛土区間を再現したものです。高槻ミューズキャンパスからは遠くに東海道新幹線が見えるので、高架区間はその高槻市内の区間をモデルにしました。盛土区間は愛知県幸田町の野場地区をイメージしたものです。

高架橋本体の地震への備えとして、地震時の高架橋の脚の破壊を抑える「鋼板巻き工法」と「圧縮型鋼製ダンパーブレース工法」の再現を盛り込みました。特に後者に用いられているX字型の補強材はCADと光造形の3Dプリンターを駆使してフルスクラッチしたものです。

盛土区間では「タイロッド付きシートパイル締め切り工」・「張りブロックコンクリートとアンカーによる地山補強土工法」を再現しました。この盛土区間は軟弱地盤のために建設時に難工事だったことが工事誌に残されている場所です。地盤が軟弱だと地震時に液状化を起こしますから、被害を最小限に抑える工夫がされている訳です。

鉄道趣味者として、これまで車両ばかりに目がいっていましたが、今回、ジオラマを製作するために資料を集めて試作を繰り返したことで、構造物にも様々な形態があり、細かな対策が積み重ねられていることを知りました。文献を読むだけでなく、形を作ることで、より深く理解できたように思います。これを見た人と、災害は事前の備えが大事であることを共有できるとうれしいです。

写真1
写真2
写真3
写真4