熊本城の石垣変状調査

小山ゼミ3回生の田中里歩です。

10月11日に熊本城の石垣の変状調査のため、熊本に行きました。
小山ゼミでは、熊本城の修復にむけて、熊本地震後の熊本城の城郭石垣の変状を調べています。地震で変状が生じた石垣について、その変状が台風による強風や降雨で進行していないかどうかを調べています。小山ゼミでは地震後に年2回程度調査を行っており、今回が7回目の調査になります。

調査は、レーザースキャナを使ってそれぞれの石垣の3次元形状を計測します。
今回、私たちは、「平櫓」や「宇土櫓」といった国の重要文化財にも指定されている櫓の石垣、加藤神社の東側にある「櫨方(はぜかた)三階櫓」の石垣、月見櫓周辺の石垣について主に計測しました。13時頃から計測を開始し、17時ごろまでに計測を終えました。
まず、計測を行った場所は、「平櫓」の石垣です。

写真では、やや分かりづらいですが、石垣上部の崩壊、石材の欠けや剥離などが目立っていました。また、石積表面や内部に水がいるため植生や苔が繁茂していました。この石垣は地震による崩壊は免れていますが、石垣上部右側に大きく前に孕み出している箇所があります。今後、櫓も含めて修復が必要な状態であると言われていますが、櫓が重要文化財に指定されており、天守閣など比較的新しい時代に修復された石垣のように、修復履歴はないため、築城当初使用されていない補強技術を用いて修復をしてよいのか、また、いつの時代までさかのぼって修復するのかについての議論が続いており、簡単ではないそうです。


次に、櫨方三階櫓および宇土櫓の計測をしました。写真は宇土櫓の石垣の全貌と西側の石垣です。

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宇土櫓の石垣は、地震後に西側奥が大きく孕み出しています。この大きな孕み出しは前面の石材が地震動で前方に動くことで隙間ができ、そこに「ぐり石」と呼ばれる小さく砕いた石がすべり落ち、隙間に入り込むことで生じています。孕み出しの部分の上部、もともとぐり石があったところには大きな空洞ができており、雨水が入り込むと石垣の不安定化につながり、崩壊の危険もあります。宇土櫓も平櫓同様に重要文化財である櫓を支えている櫓で築城当初の状態のままここまできていますので、今後の修復においては平櫓と同じ問題をかかえています。

次に、調査でしか入ることのできない城内に入りました。天守閣の復旧は着々と進んでおり、屋根瓦や黒い外観がリニューアルされていました。天守閣の脇を通り、月見櫓周辺の石垣の計測へ行きました。

写真は、月見櫓周辺の「二様の石垣」と呼ばれる石垣です。熊本城の石垣の多くは、「算木積み」といって石垣の隅の部分で、直方体の石の長辺と短辺を交互に重ね合わせた形になっています。二様の石垣の前面は算木積みが十分確立される前の石垣で、その後ろに算木積みで積まれた石垣があります。1つの場所で2つの形態の石垣がみられることから二様の石垣と呼ばれています。
この算木積みが確立されることで、熊本城の石垣の特徴である「武者返し」(石垣の上部に行くほど傾斜を急にしていくこと)が可能になったと言われています。

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最終的に5か所の石垣を計測して、17時過ぎに調査を終了しました。

調査後、新幹線の待ち時間が十分にあったので、熊本駅構内の肥後よかモン市場にある「火の国 うまや」さんで夜ご飯を食べました。熊本名物のからしレンコンや馬刺しもいただきました。とてもおいしかったです。


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