関西大学 3研究所 研究者インタビュー
技術革新による
社会の変化を体感しながら、
メディア・テクノロジーと
社会との共存共栄の道を探る。
01経済・政治研究所「Social AR/VRによるリアリティ研究班」
立ち上げの経緯について教えてください。
モバイル・コミュニケーション研究の
発展を促すため第一線の研究者が集結
近年、スマートフォンやタブレットなどのモバイルメディア活用の広がりによって、さらには、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といったメディア・テクノロジーの急速な発展により、私たちの日常生活や社会活動は大きく変容しています。そうした新たな潮流を取り込み、よりよい社会や地域のフレームづくり(ソーシャルデザイン)につなげたい。私はそのような思いから、社会学的、観光学的なアプローチで研究活動を行っています。
関西大学には、携帯電話研究の第一人者・富田英典名誉教授をはじめ、モバイル・コミュニケーション分野の第一線で活躍されている先生方が多く在籍しています。そうした共通する領域の“知”を結集し連携して協働すれば、研究全体の発展につながるに違いない。そんな考えのもと、2025年度から「Social AR/VRによるリアリティ研究班」がスタートしました。

02研究班で取り組んでいる課題やテーマは何ですか?
班としての活動や成果などについてもお聞かせください。
「観光」「食」「メディアイベント」をテーマに社会に身を投じながら課題発見に注力
現在、実社会においては、さまざまな産業や企業、自治体や商店街などの地域組織を含めて、ARやVRの技術検討や実装が浸透しつつある段階へと入っています。研究班では、こうしたSocial AR/VRが置かれている現状を鑑み、特に展開が期待される「観光」「食」「メディアイベント」の3領域について、研究員個々が社会学、メディア論だけではなく観光学や文化人類学なども含めて多面的に分析し、具体的な政策実践に向けた提言を行うことを目標に研究活動を進めています。
私自身の研究班での活動は、主に食とメディア・テクノロジーをテーマに、研究を進めています。食はこれまでも非常に身体的でありメディアや機械よりも「手作り」が大事にされてきました。しかし、例えば、食の世界では、レストランの料理にARを付加するサービスが提供されたり、モバイル注文、またSNSでの「映える料理」など、今や食とメディア・テクノロジーは切り離せないものとなりつつあります。そうした刻々と新しいトレンドが生み出される状況に対応すべく、スピード感を持って課題の発見に努めているところです。

03研究所の活動についてどんな目標をお持ちですか?
研究班あるいは、研究員としての意気込みをお聞かせください。
探索型の研究スタイルで楽しみながら追究し
今までにない研究発表方法を模索中
かつて、ビジネスパーソン向けに開発されたポケットベルが女子高校生のメッセージツールになったように、新しい技術が社会に実装された際に、当初の目的とは違った形で利用されることがしばしば起こります。この概念をメディアの社会構成主義と呼びます。私自身も社会の変化を楽しみながら、メディア・テクノロジーと社会との共存共栄の可能性を探っていきたいと考えています。
研究班の研究スタイルは探索型。仮説を立てずに、今現在進行している現象にまずは飛び込み、課題を発見し状況に応じて形を変える柔軟さが特徴です。さらに、研究発表もSNSやVRで行う。将来的には、そんな研究班ならではの新しい試みにも挑戦したいと思いを巡らせているところです。

PROFILE

松下 慶太教授
Professor MATSUSHITA Keita
関西大学社会学部教授。専門はメディア論、ソーシャル・デザイン。「働き方」「食」「観光」をテーマに、フィールドワークやワークショップを展開。