関西大学 3研究所 研究者インタビュー

石崎 博志 ISHIZAKI Hiroshi

東西学術研究所
東アジア言語資料研究班

将来、この研究班での探究が
誰かの役に立つことを願って。
一つずつ成果を積み重ね、
言語教育の現場へ還元したい。

Researcher Interview Researcher Interview
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01東西学術研究所「東アジア言語資料研究班」
参加の経緯について教えてください。

東アジア圏の言語文化を
周縁から照射する研究班に参加

私はこれまで中国語や琉球語の歴史的変遷を、他言語の文献資料との照合を通して探究してきました。それは録音機器がない時代の言語構造や特徴を知るためには、対象言語そのものだけでなく、周辺地域の言語で書かれた資料を読み解く作業が不可欠だからです。
その点、「東アジア言語資料研究班」は欧米資料を含む周縁地域からの視点を重視して近代の言語文化を解明するだけでなく、人文情報学的手法を取り入れた分析にも積極的に取り組んでいます。こうした姿勢は私の研究関心と親和的であり、2021年度に関西大学へ着任した際、自分の専門性を研究班の活動に活かせると考え、参加することを決めました。

02研究班で取り組んでいる課題やテーマは何ですか?
班としての活動や成果などについてもお聞かせください。

研究所所蔵の文献資料を紐解き
未解明の事実を探す研究へ

研究班では、日本語・朝鮮語・満州語・琉球語に加え、中国を訪れた西欧宣教師によるスペイン語・フランス語・英語など、多岐にわたる資料をもとに東アジアの言語文化を読み解く研究が進められています。今後は、複数言語が併記された対訳資料を持ち寄り、班員間で比較・考察するプロジェクトも構想しています。関西大学には、中国語教育史の膨大な資料群として知られる「澤文庫」が所蔵されています。私は長く「官話」の研究にたずさわってきましたが、このコレクションに所蔵されている中国語教科書を参照することで、男女の言語差を分析する研究を前進させることができました。とりわけ注目したのは、20世紀初頭の中国大陸で日本の出版社が発行した女性向け中国語教科書です。この教材には、外部の要人には過剰なほど丁寧に、使用人には命令口調で話す女性の姿が垣間見られます。当時の中国における日本人女性の振る舞いや理想が反映された言語使用と考えられ、ジェンダーの観点からも興味深い資料でした。

03研究所の活動についてどんな目標をお持ちですか?
研究班あるいは、研究員としての意気込みをお聞かせください。

データ分析の力を取り入れつつ
成果を積み上げて研究の体系化を

当面の目標としては、さきに述べた女性向け中国語教科書のテキストをデータ化し、女性口調に特徴的な表現を抽出して出現頻度を数値化・可視化することです。これにより中国語における「男言葉」「女言葉」の特徴や歴史的変遷を、より精緻に分析できると考えています。
とはいえ、コンピュータの活用はあくまで研究の補助で、それで一挙に何かが解明される訳ではありません。班の研究員と協働し、広い視野を確保しながら一つひとつ成果を積み上げていく必要があります。それではじめて東アジア諸語についての体系的な知見が言語教育に還元できるようになると思っています。自身の研究が、誰かの理解や学びの一助となること——。それこそが研究者としての率直な願いです。

PROFILE

石崎 博志教授
Professor ISHIZAKI Hiroshi

関西大学文学部教授。主に琉球語・中国語を対象とし、他言語で書かれた資料を取り入れつつその歴史的変遷を研究。

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