SDGs 世界を変えるために私たちは何ができるか? 私たちは考動する
対談
国連広報センター 所長 根本 かおる
学長 芝井 敬司 SDGs 世界を変えるために私たちは何ができるか? 私たちは考動する
対談
国連広報センター 所長 根本 かおる
学長 芝井 敬司

Tops Interview

SDGs(持続可能な開発目標)は世界の共通言語
達成に向けた取り組みが、人々をつなぐ

※掲載内容は2019年12月撮影時点の情報です。

2015年9月、国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられたのが、持続可能な開発目標(SDGsエス・ディー・ジーズSustainable Development Goals)だ。
SDGsは17のゴールと169のターゲットから構成される世界目標で、途上国と先進国とが共に、「地球上の誰一人取り残さない」ことを目指し、日本も積極的に取り組んでいる。
関西大学でも「SDGs推進プロジェクト」を設置し、SDGs達成に向け、分野横断的で多彩な活動を推進している。
今回は、自らSDGs推進プロジェクトの座長を務める芝井敬司学長が、SDGsの積極的な取り組みを呼び掛ける国連広報センターの根本かおる所長にお話を伺った。

Theme
01

国連への関心と理解を広めるために

芝井 はじめに国連広報センターのお仕事についてご紹介いただけますか。

根本 日本が国連に加盟したのが1956年。その2年後には日本に国連広報センターが開設されました。
その業務を2、3ご紹介します。日本語は国連の公用語ではありませんので、国連の活動や議論されている課題の中から、日本の方々にぜひお知らせしたい、あるいは多くの方が関心を寄せると予想されるコンテンツを、私たちが目利きとなって選び出し、日本語に翻訳して発信しています。
また、日本国内にはUNEP-IETC(国連環境計画国際環境技術センター、大阪市)、WHO健康開発総合研究センター(神戸市)、UNWTO(国連世界観光機関駐日事務所、奈良市)など、29もの国連諸機関の事務所があります。国連と国連諸機関が一緒に「一つの国連」として情報発信していく際には、日本では私どものセンターがその調整役を担っています。
それから、事務総長など国連の高官が訪日した時の受け入れも、私たちが全面的に対応します。国連広報センターは日本における国連の大使館のような役割を果たしているとご理解いただければ良いかもしれません。

Theme
02

身近なところからSDGsを

芝井 私が学長に就任し、初めて迎えた卒業式で、ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユサフザイさん〈※1〉の話をしました。2018年の卒業式では、グラミン銀行創始者のムハンマド・ユヌスさん〈※2〉の話をしました。世界に目を開き、そこにある課題に対して、自分はどうするのかを自問してほしいと学生たちに伝えていきたい。そこで、この春の入学式ではSDGsについて言及しました。
本学は環境問題については、比較的しっかりと対応してきたと思います。その取り組みや成果は、大学の環境報告としてまとめています。例えば、学内の答案用紙などからトイレットペーパーに再生したり、大学生協と共にリサイクルにも取り組んだりしています。
しかし、SDGsにはいろいろな分野の目標があるので、何を、どうしたら良いのか少し難しく感じる人もいます。そのような人に対して、私は「個人ですべてをやろうと思うのはあまり意味がない。まず、自分の身近なところで1つしてみる。そして、また1つしてみる。そういう形で始めればいい」と話しています。ただし、組織としてはスピード感と鋭さがないとダメです。解決のために即断を求められることもあります。

根本 大学について言えば、例えば、女性教員の登用・活用のさらなる推進も必要だと思います。マララさんがあれほど共感されたのは、テロに屈せず、女の子だって勉強したいっていうことを、勇敢に訴え続けたところにあります。政治家たちに気候行動のリーダーシップを求める座り込みをたった一人で始めたグレタ・トゥーンベリさん〈※3〉もしかり。自由闊達な議論の場である大学だからこそ、偏見やステレオタイプを変えていくことができるのではないかと思います。
今後、SDGsに積極的に取り組んでいかない組織は選ばれなくなると思います。現代の若者たちはサスティナビリティやフェアネスに敏感です。彼らの目にかなうような商品、サービス、教育を提供できないところはどんどん取り残され、社会的評価も得られなくなるでしょう。

  • 〈※1〉パキスタン出身の人権運動家。2014年に、史上最年少の17歳でノーベル平和賞を受賞。2012年10月、中学校からの帰宅途中、スクールバスに乗っていたところを銃撃され重傷を負う。翌年、国連本部で「銃弾では私の行動は止められない」と演説し、教育の重要性を訴えた 本文に戻る
  • 〈※2〉バングラデシュの経済学者、実業家。地方の貧困層に無担保小口融資を行うグラミン銀行創設者。その功績が認められ、2006年ノーベル平和賞を受賞 本文に戻る
  • 〈※3〉2003年生まれの17歳、スウェーデンの環境活動家。地球温暖化によりもたらされるリスクを訴えている。2018年から気候変動への抗議ストライキとスピーチを始めた。2019年1月、スイスで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でのスピーチが注目され、世界中で反響を呼んだ 本文に戻る
学長 芝井 敬司

世界に目を開き、
そこにある課題に対して、
自分はどうするのかを
自問してほしいと
学生たちに伝えていきたい。

Theme
03

ニュースでは見えてこないSDGs達成への潮流

芝井 アメリカはパリ協定〈※4〉から離脱することを決定しました。また、先進国はこれから発展しようとしている途上国の発展を妨げるのかという声もあります。環境問題への取り組みについて、そのような対立や批判は潜在的にずっとありました。これから、SDGsは利害がぶつかり合う問題と対峙して、その真価を問われる時が来るかもしれません。

根本 SDGsやパリ協定について言えば、2020年は節目の年として記憶されることになると思います。
アメリカのパリ協定脱退が効力を持つのが2020年11月4日です。しかし、アメリカ国内では、政府以外で温室効果ガス削減に熱心に取り組む動きもあります。例えば、パリ協定には途上国の温室効果ガス削減を支援するための「緑の気候基金」〈※5〉というものがあり、先進国は積極的に資金を拠出していくことを決めています。日本は前回と同じく、約1,700億円拠出することになっていますが、アメリカ政府はゼロです。しかし、カリフォルニアなどの州政府や企業がそれを補うほどの資金を拠出しようと精力的に活動しています。今年9月には、世界の130以上のメガバンクによって責任銀行原則〈※6〉が発足しました。

芝井 ニュースや新聞では、政府や政治家の動向や言動にどうしても目が行きがちですけれど、それだけでは見えてこない、SDGs達成につながる大きな潮流が形成されつつあるわけですね。

  • 〈※4〉気候変動抑制に関する多国間の国際的協定(合意)。2015年12月にパリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択された。産業革命前からの世界の平均気温上昇を2度未満に抑え、加えて1.5度未満をめざす 本文に戻る
  • 〈※5〉「緑の気候基金(Green Climate Fund: GCF)」:気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)に基づき、途上国による温室効果ガス削減(緩和)と気候変動の影響への対処(適応)に支援するために設立された多国間基金 本文に戻る
  • 〈※6〉「責任銀行原則(Principles for Responsible Banking:PRB)」:国連のSDGsやパリ協定に整合した投融資行動を金融機関に求めるもの。2019年12月、国連本部において調印式が開催された 本文に戻る
Theme
04

若者は、未来ではなく、今日のリーダー

根本 SDGsは世界の共通言語だと思うんです。課題に取り組む世界中の人たちがつながり、自分の経験や学びを共有できる最適なプラットフォームだと思っています。これは、国連事務総長がよく言うことですが、「若者は未来のリーダーではない。今日のリーダーだ」と。「マララさんやグレタさんのような若者が大人に発破をかけ、世界をリードしているじゃないか。未来のリーダーという見方はもうやめよう」と。今日のリーダーである若者を勇気付け、背中を押し、SDGsの取り組みを通して世界から学ぶ、世界と共有する。そのような教育を大学にはお願いしたいと思います。

芝井 すごく大切なお話ですね。若者は未来ではなく、今日のリーダーであるというのは興味深い視点ですね。だからこそ、大学あるいは社会全体が若者をチアアップすることをしっかりと考えなければならないと感じました。
SDGs達成に向けて、一大学だけでできることには限界があります。大阪には府内の41大学からなる「大学コンソーシアム大阪」という組織があり、私はその理事長を務めております。そこでも、SDGsに沿った活動を推進していきたいと思っています。

根本 関西大学は大阪の私立大学の代表格ですよね。そして、大学コンソーシアム大阪でも大切な役割を担われていると。私立大学らしいフットワークの良さで、必ずSDGsを推進するパートナーとなっていただけると期待しております。

国連広報センター 所長 根本 かおる

SDGsは
世界の共通言語だと思うんです。
課題に取り組む
世界中の人たちがつながり、
自分の経験や学びを共有できる
最適なプラットフォームだと思っています。

関西大学ニューズレター『Reed』

関西大学ニューズレター
『Reed』

プロフィール

根本 かおる

Kaoru Nemoto
根本 かおる

国連広報センター(東京)所長。1963年神戸市生まれ。東京大学法学部卒。テレビ朝日を経て、コロンビア大学大学院で国際関係論修士号を取得。96年から2011年まで国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)にて、アジア・アフリカ等で難民支援に従事したほか、ジュネーブ本部では政策立案等も担当。WFP国連世界食糧計画広報官、UNHCR協会事務局長も歴任。13年8月より現職。著書に『難民鎖国ニッポンのゆくえ─日本で生きる難民と支える人々の姿を追って─』(ポプラ新書)など。

芝井 敬司

Keiji Shibai
芝井 敬司

関西大学学長。1956年大阪市生まれ。78年京都大学文学部史学科(西洋史)卒業。81年京都大学大学院文学研究科博士課程後期課程中途退学。84年関西大学に着任し、専任講師、助教授を経て、94年文学部教授。文学部長、副学長を歴任し、2016年10月より現職。日本私立大学連盟常務理事、大学コンソーシアム大阪理事長も務める。主な共著に『新しい史学概論』『EUと日本学─「あかねさす」国際交流─』など。

  • Japan. Committed to SDGs
  • SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 関西大学 関大研究力 研究まとめサイト
  • 関西大学 環境保全
  • 学生によるSDGsの取り組み

関西大学SDGsの取り組みに関する
お問い合わせ先

関西大学 KANDAI for SDGs推進プロジェクト事務局(学長課)
〒564-8680 大阪府吹田市山手町3丁目3番35号
TEL 06-6368-1121(大代表)

ページトップへ戻る