KANSAI UNIVERSITY
吹田浩教授
文学部 吹田浩 教授
紀元前2360年ごろに描かれた世界最古の壁画を救出!
関西大学国際文化財・文化研究センター(CHC)の吹田浩教授は、
エジプトで地下埋葬室の壁画の保存・修復をおこなっています。
 

エジプトで新しい研究領域を切り拓く

かつて、エジプトの遺跡といえば、発掘を中心とした考古学ばかりに焦点があてられていましたが、近年は、遺跡そのものの保存や修復の技術開発が求められていました。吹田教授は、文化財の保存・修復に関する専門家が少ないことに着目。関西大学の在外研究制度によってカイロ大学考古学部に客員研究員として滞在し、日本とエジプトの間で文化財修復プロジェクトの立ち上げの可能性を論じ合いました。そして2003年、「日本・エジプト合同マスタバ・イドゥート調査ミッション」として研究をスタート。関西大学で長年おこなわれてきた、エジプト文字を読み解くことで歴史や文化を明らかにする研究をベースに、文化財の修復分野へ飛び込み、新たな研究領域として切り拓きました。

 
 

世界最古の壁画を救うために

1979年、「メンフィスとその墓地遺跡―ギーザからダハシュールまでのピラミッド地帯」として世界遺産(文化遺産)に登録されたエジプトのサッカラ地域。その代表的な遺跡であるイドゥートという王女の墓には、地下埋葬室に大変美しい壁画が残っていました。埋葬者の死後も安寧であることを願い、肉・鳥・ビールなどの供物や呪文が描かれたこの壁画は、紀元前2360年ごろに描かれたにもかかわらず、鮮やかな原色を保っていたのです。しかし岩盤の状態が悪く、剥落しているところもあり、壁画の保存・修復は急がれました。2008年に関西大学は、文化財修復研究が、文部科学省の私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に採択されたことを受け、「関西大学文化財保存修復研究拠点(ICP)」を設立。2013年からは「関西大学国際文化財・文化研究センター(CHC)」として日本・エジプト・ポーランドの合同研究で、壁画の修復技術の開発に成功しました。

文化財の専門家だけでは、文化財の修復はできない

修復技術の開発にあたり、日本が貢献したのは、実は日本の伝統技術の応用でした。壁画の剥ぎ取りに際して、閉鎖空間の地下埋葬室では、多量の有機溶剤を使うヨーロッパ流の表打ち方法は危険でした。そのため「フノリ」や「和紙」など、文化財に悪い影響を与えない自然素材の利用が有効であると考えられたのです。日本の伝統的な技術、エジプトの文化財に関する豊富な知識、ポーランドの剥ぎ取り技術、それぞれの長所を活かし合うことで新しい修復技術を開発することができました。

 
 

「総合文化財学」の確立へ

真の文化財保存・修復には、異文化に対する深い研究のもとに、文理両方の専門性をもった学術的アプローチを組み合わせることが必須です。関西大学には人文科学系だけでなく、世界に通用する多くの理工学系の教員も在籍し、さまざまな技術を相互に利用することが可能。また、カイロ大学をはじめ多くの協定校とのつながりもあり、他国への正しい理解を得ることができます。異文化を正しく理解した上で、必要な技術を組み合わせ、歴史的重要な文化財の保存・修復に寄与する。それが、関西大学にしかない「総合文化財学」です。今後も、関西大学ならではの新たな研究成果が生まれることが期待されます。

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