KANSAI UNIVERSITY
矢田勝俊教授
商学部・データサイエンス研究センター 矢田勝俊教授
まだまだ解明されていない消費者の行動。特に、これまで未開とされてきた店舗内の購買プロセスを解き明かすために
無線LANなどによる位置情報を活用した「顧客動線データ」に着目。売る側も買う側も、もっと満足できる売り場づくりへ、挑戦は続きます。

二足のわらじで学び、膨大なデータに挑む

矢田教授が、初めてデータマイニングの世界に出会ったのは学生時代。当時、神戸の大学院に通っていた際、阪神・淡路大震災で被災したのをきっかけに、昼は小売業の企業で働き、夜は大学院で経営学を学ぶ生活を送っていました。情報システムの在り方について学びながらも、実際、小売業の現場で目の当たりにしたのは、まったく手つかずの膨大な顧客データ。そこで、レジ打ちなど小売店現場の仕事を体験しながら、コンピュータの知識、プログラミングなどを独学で勉強してデータマイニングのビジネス応用について研究。それらのデータを元にコンサルティングを行い、店舗運営担当者からの相談に応え、企業との様々なプロジェクトに関わるようになりました。

※データマイニング (Data Mining):データからの知識発掘。大規模なデータベースから発見されたパターンやルールを知識
ベースとして蓄積・学習し、新しい知識を発見・学習するプロセス

世界でも未開の、顧客動線データに着目

店舗で消費者が買い物をする時、どの商品棚の前に立ち止まり、何を考え、購入を決めるのか。その購買行動を見える化できる「顧客動線データ」に矢田教授は着目。この分野の研究は世界的にもあまり進んでおらず、矢田教授が所長を務める関西大学データマイニング応用研究センター(現:データサイエンス研究センター)とアメリカのコロンビア大学が提携し、研究を先導しています。未開の原因とも言える課題は「店側の負荷をいかに軽減するか」でした。例えば、ビデオモニタリングによる顧客動線データの収集は、配線工事が必要になり、店側にとっては大きな負担になります。矢田教授は様々な収集方法を検討し、辿り着いたのが、無線LAN(Wi-Fi)を活用して位置情報を収集する方法。位置情報を発信するICタグをショッピングカートに取り付けて、店舗内に配置したアクセスポイント(無線LAN基地局)を通じてカートの動きを追跡し「顧客動線データ」を収集。ネットワーク工事の必要もなく、短時間で導入できます。

小売店・メーカーには売りやすさを、消費者には買いやすさを

顧客がどの棚に「訪問」したか、またはどのくらい悩んだかという「考慮時間」が見えてくる「顧客動線データ」。従来から活用されている、商品に貼られたバーコードをレジで読み取るPOSデータ(売上データ)と組み合わせることで、小売店とメーカーのビジネスチャンスが大きく広がります。ある特定の売り場に顧客が「訪問」したかどうかが分かることで、店舗内の効果的なプロモーションが可能に。また、デザートは悩む時間が多い、ビールなどブランド品は即決するケースが多いなど、商品ごとの「考慮時間」が分かれば、各カテゴリー別に、購入へのアクションを導くための店頭戦略が合理的に行えます。さらに、店舗内での顧客の歩く距離や時間の使い方が分かるメリットも大きく、シルバー世代など、顧客層に合わせた効率的な売り場づくりが実現。一方で、「顧客動線データ」は消費者にとっても売り場の魅力を高めることになり、より買いやすく、選ぶ楽しみが広がっていきます。矢田教授は、分析から得た理論モデルをネット上などでオープンソースとして社会にフィードバック。そして日用雑貨、飲料品、食品など様々なメーカーとともに「顧客動線データ」を活用した実店舗での実証実験を行い、現在ではビジネスの現場へとデータの活用は拡大しつつあります。

新たなビジネスチャンスを生み出すフロンティアの開拓へ

データを分析する上で大切なのは、「現場の知識」であると矢田教授は考え、研究室の学生は、スーパーなど現場を見に行くことから始まります。学生たちは、教授と共に様々な企業テーマに関するデータを分析。卒業後は企業の企画開発部門などで多く活躍し、データに基づいた論理的なビジネスプランの立案に、その経験が活かされています。現場で汗をかいて働く人のためになる研究を続けたいと考える矢田教授の信念は、まさに関西大学が掲げる「学の実化」に通じています。データマイニングを応用してビジネスチャンスを生み出す、新たなフロンティア開拓に向けて、これからも矢田教授の挑戦は続きます。

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