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大矢裕一教授
化学生命工学部 大矢裕一教授
外部環境に応じて変幻自在の「賢い新材料」スマートバイオマテリアル。大矢裕一教授は、医療用材料や薬剤に応用することで、患者に優しい新たな治療法を生み出そうとしています。
スマートバイオマテリアルの実験再現ムービーです。<ムービーを見る>

新しい材料で、まったく新しい治療法を

これまでの医療の進歩を振り返ると、医学や分子生物学の発展と、医療用の材料・機械の進化が両輪となって新しい治療法が生まれてきました。大矢教授は、これまでにない機能をもつユニークな新材料を生みだし、それを使うことではじめて可能になる「材料主導型医療」を提案することを目的に研究チームを組んでいます。温度やpH(水素イオン指数)などの外部環境に応じて物性が変化したり、分子を識別して機能を発現する材料は“賢い材料”という意味で「スマートマテリアル」と呼ばれています。そのなかでも医療分野で用いられるものを「スマートバイオマテリアル」と呼んでいます。

 
 

患者さんへの負担を軽減しながら、治療効果を向上させる

「スマートバイオマテリアル」の代表的なものが、「生分解性インジェクタブル(注射可能)ポリマー」。室温の25℃では溶液状ですが、ヒトの体温に相当する37℃に温めるとゼリー状(ゲル)に固まる材料です。これは、薬を必要な時間に必要な量だけ患部に届ける「ドラッグデリバリーシステム」に応用できます。注射器で皮下や腹腔内に注入すると、体内でゲル状態に固まり、ゲルが分解しながら徐々に薬剤が放出されます。切開手術が不要で、薬の投与回数を減らすことができるので、患者さんの体への負担や副作用を軽減。さらに、薬物濃度を保ちながら時間をかけて放出されるため、治療効果の向上にもつながります。水になかなか溶けないので医師が医療現場で使いにくいことが問題でしたが、大矢教授はこの問題を解決しました。現在、実用化に向け製薬会社との共同研究もスタート。さまざまな薬に応用できるため、次世代医療の可能性を大きく広げることが期待されます。

再生医療への応用も視野に

現在話題の再生医療への応用も注目されています。患者自身の細胞や、人工多能性幹細胞(iPS細胞)などと細胞成長因子を混ぜ、体内の組織が欠損した部分に注入する。すると強度のあるゲルとして固まり、細胞が増殖する“足場”となるのです。組織の再生とゲルの分解が並行して起きることで、ゲルが少しずつ細胞に置き換わっていくイメージです。さらに開腹手術において、臓器面に噴霧すれば、どんな臓器の形にも合う使い勝手のいい癒着防止膜としても応用可能です。

 
 

ほかの研究者とちがう、新たな出口を見つける

「スマートバイオマテリアル」の研究は、文部科学省平成22年度私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に採択されています。学内の9人・学外の2人の研究者とともに、さまざまなテーマで研究を進める大矢教授。多様な研究を組み合せることで、お互いに刺激を与え合い、知識を共有することで、新たな発想が生まれることがあります。学生に対しても、自分で考える習慣をつけるように指導。答えを教えるのではなく、学生が自分で出したアイデアに対してアドバイスを行います。自分で責任をもち、プレッシャーのなかで成果を出す。それこそが、“新たな答えを見出すチカラがつく”と大矢教授は考えています。

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