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【執行部リレーコラム】ブータンについて

2018.08.31

副学長 前田 裕

 Royal University of Bhutan(RUB)が関西大学の協定大学になったのは2016年6月である。ブータンでは首都Thimphuの郊外にあるRoyal Thimphu Collegeも協定校で、本学はブータンに2つの協定大学を持っている。

 RUBの傘下のJigme Namgyel Engineering College(JNEC)は、学生数850名弱の工科の大学でSamdrupjingkhar県Dewathangにある。Dewathangは首都から東南東に直線距離で約200km、インドとの国境近くに位置する。海抜は800m程度で、高地にあるというブータンのイメージとはかけ離れていて、暑い。車で首都から移動しようとすると山道を通って3日はかかる。したがって、インドから入るのが楽である。

 関西大学は、これまでJNECへの支援、特に、4年制の機械工学科設立のサポートをしてきた。本学機械工学科を退職された緒方先生が1年間、この6月まで現地に滞在してJNECの教員として活動されていた。また、設立される機械工学科のカリキュラムや実験の内容についても、関西大学でのノウハウを元に機械工学科の先生方が助言をされている。関西大学でのカリキュラムをそのまま持ち込むのではなく、ブータンの実情にあうカリキュラムはどうあるべきなのかの議論がJNECの先生方とで行われた。この学科は2019年7月に開設の予定である。これ以外にも、昨年からSakura Scienceプログラムで10名の学生と1名の先生を関西大学に招いている。

 ブータンは日本では幸せの国として知られている。澄み切った青空と深緑の森、ゆったりとした生活スタイルというような理想的な生活を思い浮かべる方が多いかも
れない。確かに、JNEC近郊の街でみる人々の生活はのどかで、悠々閑々としているようにみえる。

 JNECのAndu Dukpa学長は、週2回朝8時30分から開かれる朝礼で学生を前に、「ここは緑に囲まれた、新鮮な酸素が一杯のすばらしい場所である。しかし、みなさんやこの国の将来は、それだけでは安泰ではない。」と話す。JNECの学生は純真で、学習意欲も高い。高度な教育の機会を得ることを熱望している。一方で、その機会が乏しい。

 いままで純粋にブータンの発展のために多くの日本人が国際社会貢献を行ってきた。このような交流の積み重ねが、ブータンが日本を兄のように慕っている理由ではないか。主たる産業をもたないブータンにとって経済的な発展は、国民の生活を維持していく上では重要である。一方で、豊かな社会、幸せな国とは何か。

 ブータンでの携帯電話の普及率は87.1%(2015年)に達しており、ブータンの若い世代も携帯端末を手に容易に世界をみることができる。このことは彼らの社会も急速に変わりつつあることを示している。閉じた社会での内なる幸せだけを求めることはできない。彼らが、どのような視点から日本や海外の社会を評価し、そのノウハウを自分流に取り入れ、幸せの国を守っていくのかを見守り、支援したい。

JNEC全景
JNEC全景
朝礼
朝礼
図書館
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