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【芝井の目】ドバイのキャプテン翼

2018.08.08

 4月から関西大学総合図書館の電子ブックサービスで協力してもらっている紀伊國屋書店の高井昌史社長と会ったときのことです。この書店が海外で約30店(国内は約70店)も展開していると聞いて意外でしたが、アラブ首長国連邦のドバイ店で「キャプテン翼」のアラビア語版を売り出したことも驚きです。
 この漫画は各国で翻訳版やアニメが流れ、特にサッカーフアンの多い中東でアニメの人気が高いそうです。そこでドバイに出店している紀伊國屋さんがアラビア語版を企画しました。翻訳を買って出たのが、当時東京外国語大のシリア人学生で4年生だったカッスーマー・ウバーダさんです。
 ウバーダさんは小さいころからテレビアニメで翼フアンとなり、「故国の子どもたちのために」と翻訳を引き受けたそうです。やがて日本の出版界に興味をもち始め、それが縁で今春、14人の新入社員の一人として紀伊國屋書店に就職しました。これも意外です。
 ウバーダさんは「キャプテン翼」の翻訳などを続けながら、戦乱のおさまらない故国の「進学できない」「進学しても卒業後の仕事が見つからない」若者の支援を目指すと言います。書店業界のグローバル化は、国際的な販売網に作品だけでなく人々の新たな絆も乗せてうねり始めました。
 関西大学でも中東から約10人の留学生が学んでいます。彼等が様々な分野でこれからどんな仕事を見つけ、どんな絆を結んでいくのか。そのお手伝いをできたらと思います。

8月8日 学長 芝井 敬司