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【執行部リレーコラム】英国国立公文書館での資料調査

2017.04.13

副学長 奥 和義
 英国国立公文書館は、日本人研究者がよく利用している外国の公文書館の一つである。大学の休業期間には、多くの日本人研究者の姿を資料閲覧室で見かける。私が最初に訪れた1993年は、パスポートさえあれば、資料の閲覧が可能という、きわめておおらかな状態であったが、現在では、本人証明の公的証明書類(パスポートなど)と居住地を証明する公的証明書類(自動車の国際運転免許証など)が必要になり、資料の取り扱いに関するe-learningも要求されるようになっている。
 ただ20年余り前には、1件の資料調査に要する時間が格段に長かった。チェックリストから資料を検索し、資料番号をコンピュータ端末へ入力して、しばらくは1階にあるコーヒーショップの紅茶で一服。後は、書庫からの資料搬出終了、閲覧可能状態を示すpager(小型受信機のようなもの)による呼び出しを待つという、ある意味で優雅な時間を過ごせた。現在は、PC端末による利用許可証の読み取り、資料の検索・閲覧の申し込み、座席の指定(デジタルカメラを使用するか否かなどにより座席場所の希望も一定かなえられる)が即座に行え、資料閲覧申込後ほぼ30分以内に資料が閲覧用ボックスに入れられている。
 現地に行かずとも、HPから資料検索が容易にでき、一部の資料はPDF化されてダウンロード可能にもなっている。ディジタル技術の進歩恐るべし。ただし、すべての資料がディジタル化されているわけではないので、現地での調査は研究者にとって欠かせない。
 私は、両大戦間期の日英米中の国際経済関係史を研究テーマの一つにしているので、機会を見つけては、英国公文書館に通っている。とくに、フレデリック・リース=ロス卿(Sir Frederick Leith=Ross)が大蔵省に在籍していたときに集めて残した記録(1921年〜1946年)は、両大戦間期の国際経済、国際金融を研究するものにとって、これ以上の資料はない。残念なことに、日本人研究者が彼の文書に言及するときは、1935年の中国の貨幣制度改革研究に集中している。リース=ロスに関する強い個人的関心もあって、時間をみつけては、幣制改革以外の資料を少しずつ読み解く日々である。

(写真は、筆者が撮影した英国国立公文書館)



The National Archives
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