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留学先のドイツで前田学長と対談 外国語学部の八木さん、メディア向けにオンラインで

コロナ禍で大きな影響を受けているのが、海外へ留学する学生たちです。日本でも十分な勉学がままならないのに、渡航したうえ慣れない現地で長期間の教育を受けるのには、半端でない努力に加え時には運も必要かもしれません。外国語学部2年次生の八木真里奈さんもその一人。11月の関西大学のメデイア懇談会では、オンラインで前田裕学長に、ドイツで始まった学生生活の一端を披露しました。八木さんが意外に感じた留学生活とは──。

ワクチン接種で再挑戦

八木さんが大学に進学した理由は海外留学です。しかしコロナ禍で目標にしていたドイツへの留学がいったんとん挫しました。関西大学では「コロナ前」は毎年千人を超える学生が海外に留学しましたが、新型コロナウイルスの影響で留学人数は1割ほどに激減しました。
八木さんの場合、ワクチンへの不安も重なりました。友人たちの間でささやかれるワクチン接種に伴う副反応です。発熱や体のだるさなどに自分が耐えられるか。こうした事情で留学をあきらめました。しかし、現地の文化に直接触れたいという思いから、ワクチンを接種し、留学に再挑戦。まもなくドイツへの渡航制限が緩和されました。さらにヨハネス・グーテンベルク大学マインツ校から「受け入れOK」の連絡が入り、10月初め、同じ大学に留学する関大生5人と日本を出発、待望のドイツ暮らしが始まりました。この大学は学生数が3万人を超え、関西大学と同様の大規模校。マインツ校のある都市マインツはドイツ中部にある人口約20万人ほどの中規模都市です。

11月17日に開かれた関西大学のメデイア懇談会は、学長主催。1,2か月に1回、テレビ、新聞などのために開かれます。コロナ禍が起きてからはオンラインで開き、研究発表の後、主として学長らが説明する「関大発ニュース」を東京、大阪の記者が取材します。この日は午後3時から開かれ、八木さんは4時過ぎに画面に登場しました。地球の裏側ですから現地は朝です。おおよその質疑応答は次のとおりです。

対談

想像していたこととの違いは?

そもそもコロナは話題にのぼりません

学長 実際に暮らし始めて、想像していたこととの違いは何ですか。

八木 こちらに来て予想が外れたのは、意外とイベントが開かれていることです。また日常生活でもあまりコロナを意識することはありません。日本ではドイツでの感染急拡大(たとえば11月初旬時点で一日の感染者数が3万人超)がニュースとして大きく報じられているようですが、こちらでは学生の間でも大きな話題にはなっていません。ドイツでは、コロナを恐れていても何も始まらない。他のウイルスのように、一緒に共存していくしかないと考えられているようです。

消毒液を使う学生が増えました
メディア懇談会の様子(八木さん×前田学長)

学長 大学では対面授業が多いのですか。

八木 私の受けている授業は対面型ですが、オンデマンド型も始まります。教室内では教授も学生もマスクをしているので、声が聞こえにくいことがありますが、一歩教室の外へ出たら、学生も先生もマスクを外します。

学長 日本の大学はどこでも教室の出入り口にアルコールの消毒液を配置していますが、そちらでも同じですか。

八木 一応は置いています。感染者の増加で使う学生が増えました。

学長 留学生活が1か月を経過して、あれっと思ったことはありますか。

八木 日本人とドイツ人はよく似ている、と事前に聞いていましたが、例えば時間感覚は少し違うようです。(少なくとも私の周囲のドイツ人は)日本人ほど時間に正確ではありません。またお店での店員と客との関係ですが、日本人はお客さんをたてますが、こちらではお客は「お店に入れてもらう」という感じで日本とは逆です。

欠かさない予習で授業はスムーズです

学長 授業を受けるうえで困っていることはありませんか。

八木 今は週に7コマ受けていますが、予習を欠かさないので、困ることなくスムーズです。

学長 留学前の準備で良かったことは何ですか。

関大でのディスカッションが役立ちました

八木 教室での討論で、自分が話す用意がないときにどうしたらよいかなど関大で討論の方法などを十分に教えてもらっていたので、それがとても役に立っています。

学長 分かりました。ドイツを離れるまでの間、体に気を付けて頑張ってください。

夕食

友達(Anna)の家に招待してもらいました。久しぶりにみんなで食卓をはさんでごはんを食べて、ごはんがとてもおいしく感じました。そのあと、人生ゲームをしました。ドイツ版と日本版の人生ゲームの一番の違いは、ドイツはお金が紙幣ではなく、カードで支払われるということです。

オーケストラコンサート

週末にオーケストラを聴きに行きました。学生はほとんどのステージを無料でみることができます。色々なところで学生割引が得られることから、ドイツで学生をやることはとても価値があり、その割引を得るために学生を続けるという人も少なくないとドイツ人の友達が言っていました。

ライン川沿いでピクニック

オリエンテーションでできた友達とピクニックをしました。

余談

文学部のルチアさんは「ドイツ人でマスクつける人は医者か重病人だけ…」

実は八木さんが学ぶマインツから車で30分ほどの小さな町、アインハウゼンで生まれ育った関西大学文学部の学生がいます。2年次生のグランズナ・ルチアさんです。父親は工場に勤め、母親は幼稚園の先生。12歳の時、ユーチューブで偶然「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで」を観て、日本の「お笑い」に目覚め、関大に進学したという珍しい経歴です。
今回、八木さんの留学を知って早速、土地勘を生かし八木さんのナビ役を買って出てくれました。ラインで4時間も話し続けるほど意気投合したといいます。
ドイツの学生があまりマスクをしないことについて八木さんは不思議がったようですが、ルチアさんは「私の生まれ育った町では、ドイツではマスクをつける人は医者か重病の患者さんだけ。他人にうつるからマスクをする、という発想はなく、自分を守るために着用する、という感じ」と説明。「私のお父さんもお母さんも八木さんの近くにいるので、何か困ったことがあればいつでも…」と話しています。
(編集部より。この対談は11月中旬までの日独の社会情勢を反映したものです。その後の変化はいずれ報告します。)

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