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関西大学でのワクチン接種、約3万人が受けました ─ クーポン券や授業導入など多彩なアイデア ─

本会も支援を行った関西大学の新型コロナのワクチン職域接種は、学生をはじめ、その家族、教職員、近隣の商店会などを対象に実施され、約3万人が受けて10月に終わりました。医学部のない大学が大規模接種できた舞台裏には、20年に及ぶ伏線や、キャンパス近隣地域との連携、接種を教育現場にも取り込んだ柔軟性など、関西大学ならではの特徴がありました。

20年近い伏線

ワクチン接種の様子

関西大学は2003年に大阪医科大学(2021年に大阪薬科大学と大阪医科薬科大学に統合)と教育連携などに関する協定を結びました。以後、さまざまな研究教育分野での連携は、2016年に文部科学省から大臣表彰を受けるほどでした。
そしてコロナ禍の2021年春。事態の深刻化を受け、国のワクチン接種の動きは急でした。5月に文科省は各大学に接種会場の会場提供に関する意向調査を行いました。そして6月に入っていきなり「6月21日から接種開始。そのための申し込みは6月8日スタート」という国からの連絡が関西大学にも入りました。それがスタート前日の6月7日です。
前例のない接種のためのシステム構築も「待ったなし」。医学部を擁する大学ではないのに、3万人の学生を中心に接種をするには、設備や備品の調達に加え、参加してもらう多くの医師や看護師に短期間にお願いするのが極めて困難です。しかし、大阪医科薬科大学との連携の積み重ねがそれを可能にしました。この大学の全面的なバックアップで、予定通り6月21日から接種を始めることができたのです。

もちろんすべてが順調に運んだわけではありません。6月末には冷蔵庫の故障でワクチン2510回分を廃棄する事態に陥ったこともありました。ただ、その後は順調で、結局10月8日まで学生や保護者、地元住民ら3万人余に接種をすることができました。

ワクチン接種で生まれた商店会との絆

教育後援会もこうした事業に大きく関与しました。それは「クーポン券」による支援です。コロナ禍で大きな打撃を受けている地元の商店会を、接種を機に何とかバックアップできないか、との発想です。そうして生まれたのが「500円クーポン券」で、教育後援会の全額負担により、接種した学生に関大前商店会(約50店)で使える券を配ろうというアイデアです。チケットには50円分の2ndクーポン券がついており、店舗利用が単発に終わらないように工夫されていました。接種を受けた人にはアンケート用紙が配られ、そこには様々なご意見が記入されていました。以下の表でその一部を紹介します。
商店会には半世紀近く営業を続けるレストランなどがあり、なかには今回、特別な思いでスペシャルメニューを用意する店舗も。千里山キャンパス正門すぐに立地する「ケープコッド」もそのひとつ。この店では「おかえりなさいカレー」と称するボリュームたっぷりメニューを考案しました。

アンケートへのご意見【学生】

  • ワクチン接種のみならず、クーポン券までありがとうございます。
  • 100円のお弁当でほんとうに助かっています。
  • (関大前商店会のお店へ)
    インドカレーすごく好きです!まだ1度しか食べたことはありませんが、学校帰りに気軽に行けるくらいバイトしてお金貯めます!コロナ終息のその日まで頑張ってください!
  • (関大前商店会のお店へ)
    授業がオンラインでもお店を開けて私たちのお腹を満たしていただきありがとうございます。食堂だけでは足りない食のQOLを上げてくださったり、学校にいくまでの道をにぎわいあるものにしてくださり感謝しております。
  • 新型コロナウイルスのせいで自由に外出して遊ぶことができなくなったり、ライブも中止になったりして、とても辛いです。でも、幸せを先延ばしにしたと考えて、今は感染予防に努め、コロナの収束を待ちます!明けない夜はない、とポジティブに考え、強気で乗りきりましょう!

アンケートへのご意見【父母・保護者、一般】

  • 長男からの紹介で新型コロナワクチンの接種を妻と二人で受けさせて頂きました。接種券が届いてから近隣の施設ではどこも予約が取れなかったので非常に助かりました。感謝いたします!!
  • パート先で接種がなく、家族の中で私だけが市の集団接種を待たなければならないと思っていた矢先の関大の家族への対象者拡大。しかも一回目を7月に実施して頂けて本当にありがたかったです。会場での対応もムダなくわかりやすく親切で、安心して受けることができました。娘が関大生で良かったです。本当にありがとうございました。
  • 職場の医療従事者ワクチンが、接種10日前にワクチン不足でキャンセルされ、自治体から接種券も送付されてこず、あきらめていたところ保護者枠で予約当日の1時間後に接種して頂き感謝しています。
  • 対面授業をして下さる貴校の対応に敬服と感謝をしております。若いこの時期に様々な方々と交わる事が何よりの経験であり、教育だと思っております。今後も応援しております。愚息をよろしくお願いします。

「ニュースな世界授業」もスタート

接種と組合わせたクーポン券による地域貢献は、メディアでも大きく取り上げられ、関西大学ではこうしたニュースも教育に取り入れました。例えば8月2日から6週間にわたってひらかれた国際的なプログラムがそれです。SDGsを軸に国際的視点から世界の問題を考え、グローバル人材に必要な能力を育成することがプログラムの目的です。本学が先駆的に導入・展開するCOIL(海外とのオンライン協働学習)などを使い、参加者は本学学生および11カ国・地域(アメリカ、カナダ、中国など)の外国人学生のほか、特別ゲストとして大阪府内の高校生数名も迎え入れました。
第1回のテーマは「世界のコロナ禍とオリンピック」。コロナ禍に苦慮する日本の都市圏の実状と、その状況下で開催されているオリンピック。画面では関西大学での接種が報じられたテレビニュースも紹介され、世界の若者がオンラインで意見交換しました。

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