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タイ司法府裁判所職員研修

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紀要

 

タイ司法府裁判所職員研修

                      
 今年度も、タイ司法府裁判所職員を対象とした研修が、6月27日(月)から7月7日(木)までの11日間の日程で、関西大学にて行われた。今年で3度目を迎えるこの研修は、当初。東日本大震災の影響から実施が危ぶまれたが、無事に実施された。研修に参加したのは、約9倍の難関をくぐり抜けた40名の裁判所職員と裁判官を含む引率者7名の併せて47名である。参加者は、バンコクを中心にタイ全土から集まっている。

研修の内容は、関西大学の教員を中心とした講師陣からの日本法についてのレクチャー、司法関連施設訪問、工場見学、及び研修者自身によるカントリーレポートの報告である。日本法のレクチャーの内容であるが、開催された関西大学にちなみ、児島惟謙の大津事件を題材とした司法権の独立に始まり、司法の役割、消費者法、少年司法制度、環境権、人権とマイノリティ、公務員制度といった、多岐にわたる、幅広い内容の講義が実施された。

司法関連施設の訪問では、大阪刑務所、大阪地方裁判所、法務省法務総合研究所を訪問した。法務省法務総合研究所の訪問は、今年からの新しい試みである。法務省法務総合研究所は、日本における法整備支援実施機関の一つであり、アジア諸国の法律に関心・知識がある教官が多数在籍する。アジアに対する関心を有する者からのレクチャーは有意義であると考えられるので、同研究所を訪問し、所属する教官から日本の法曹の役割についてのレクチャーを受けた。所属する教官自身も、関西大学を訪問し、講義の方法を見学すると共に、研修担当者と意見交換をするなど、相互交流も行われた。

研修の参加者のほとんどが、日本への訪問が初めてである。研修の目的は、日本の法制度に関する知識を習得することであるが、それ以外にも日本の経済や文化についても参加者の関心は高い。そこで、研修期間中にはパナソニックやサントリーの工場を見学し、日本経済の一端に触れてもらった。また、土・日には京都、奈良に足を伸ばして、日本古来の文化にも親しんでもらった。また、講義開始前の少しの時間を使って日本語講座も開催された。もちろん、参加者自身も終始受け身でいるわけではなく、講義終了後、積極的に、梅田や神戸まで探検することもある。筆者は、今年4月に大阪に来たばかりで、梅田のことは全くといって良いほど知らない。一度、研修参加者と梅田で食事をし、買い物につきあったことがある。買い物終了後ホテルに帰る際、私は迷子にならないために、一生懸命案内板を見ていたが、ある参加者は案内板を見ることなく、阪急の乗り場に向かっていき、結局私が後をついて行く形になった。無事阪急の乗り場に着いた時、安堵感と共に人間のやる気、好奇心の偉大さを感じた。

この研修では、参加者が日本の法制度について、より関心を持ち、より主体的に学ぶために、参加者はいくつかのグループに分かれ、カントリーレポートを報告する。今年のカントリーレポートのテーマは、①タイにおける司法行政、②タイ憲法、③タイにおける環境権、④ADR、⑤タイにおける裁判員制度および刑法、⑥タイにおける法曹である。参加者は、タイに帰国後、研修で学んだことを活かして、日タイ比較の視点を導入して、レポートを完成させる。

さて、今年度の研修の感想であるが、まずは、非常にタイトな予定の中で、参加者が熱心に研修に参加していたことをあげることができる。初めて訪れる国で11日間の長期にわたって研修に参加するのは、大きな困難が伴うことは容易に想像される。しかしながら、中だるみや健康を害するといったこともなく、参加者が積極的に講義等に参加し、質問している姿に大きな感銘を受けた。そして、3年目を迎えて関西大学での研修の方法が浸透しているためか、カントリーレポートの質もこれまでに比べて良かったと思われる。日タイ比較の視点を入れた報告書を拝見できるのが楽しみである。

東日本大震災の影響の関係で実施が危ぶまれた研修であったが、無事に研修を終了することができた。タイ側の参加者をはじめ、この研修に関わった日本側の関係者双方の努力の賜物であると思われる。今後も研修を継続して、タイ司法府と関西大学との間の交流が進展すると共に、個人レベルでの交流が進むことを期待したい。最後に、参加者の1名から、東日本大震災の被災者に対する義援金を頂いた。彼の心配りに感謝すると共に、今回の研修が成功したことの証左ではないかと喜んでいる次第である。

西澤 希久男(関西大学政策創造学部准教授)

 


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