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第21回マイノリティ・セミナー

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ニュースレター

紀要

 

第21回マイノリティ・セミナー
「1.タイ消費者保護制度の傾向
 2.タイにおけるミャンマー人労働者をめぐる
   法的諸問題」

 第21回マイノリティ・セミナーが2012年11月26日に2名の報告者を迎えた開催された。両名の報告に共通するのは、タイにおけるマイノリティの問題を扱っているところである。

 まず第1報告は、タマサート大学法学部助教授、関西大学大学院ガバナンス研究科の外国人招聘研究者である、ウィラワット・チャンタチョート氏により、「タイの消費者保護制度の傾向」と題して行われた。消費者問題は経済が発展するにつれてどの国も経験する社会問題であるが、タイにおいても同様に消費者問題が深刻化している。そこで、報告では、まずタイにおいて発生している具体的な消費者問題として、信用取引、自動車販売、通信サービス、健康関連商品・サービス等における問題点が指摘された。その後、消費者保護法制、政策についての概要が説明された後、タイの消費者保護問題に関する制度上の問題点として、損害救済制度、消費者教育、各事業者・業界団体の苦情処理制度における各種の問題が指摘された後に、消費者保護の将来について、損害救済政策と消費者保護独立機関の設置の可能性について報告がなされた。タイの消費者行政は、その他の部門の行政と同様に、中央が非常に力を持っており、現場である地方は単に中央からの指示を待って活動を行うのみである。この場合の問題点として、中央と地方における職員の能力と意識の差を上げており、地方における消費者行政の発展のために、地方に権限を譲渡すべきであると提案する。また、憲法上設置が要請されている独立の消費者保護機関により不利益を被るグループによる妨害に危惧を呈しながらも、公的、私的両部門への好影響を期待して報告は終了した。

 第2報告は、アジア経済研究所新領域研究センター法・制度研究グループ長の山田美和氏により、「タイにおけるミャンマー人労働者をめぐる法的諸問題」と題して行われた。現在、軍政から移行過程おいて世界的に注目されているミャンマーであるが、長期間にわたる軍政により経済的な問題が存在したため、多数のミャンマー人が隣国のタイにおいて就労する実態が存在した。タイにおける就労は不法であったが、これは何もミャンマー人に限られる訳ではなく、ラオス人やカンボジア人による就労も同様の問題を抱えていた。タイ政府としては、外国人不法就労の問題を「合法化」する政策を有していたが、ミャンマー人の場合、ミャンマーにおける政策やタイとの二国間関係を原因として、ラオス人やカンボジア人の場合と異なり、合法化政策がかえって搾取を進行させるというパラドックスについて、制度の具体的手続に触れながら、詳細な報告がなされた。ミャンマーの場合においては、軍政からの迫害や民族対立を原因としてタイに不法入国していることが多い。そのため、ミャンマー政府としては、積極的に自国民保護をしようとするインセンティブにかけるため、国籍証明の際に便宜を図ることをしないため、他の2国とはことなり合法化への道が閉ざされてしまう。そのため、合法的な資格を獲得することが困難なミャンマー人は搾取の対象となってしまうという問題が生じていることが報告された。

 両報告とも、タイに関する最新の知見に基づく貴重な報告で有り、参加者から活発な質問が出されていた。                     

西澤 希久男(関西大学政策創造学部准教授)

 


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