2008年度CMS海外出張見聞録
佐賀大学・奈須祐治
(マイノリティ研究センター研究員)
2009年3月15日から23日までの間、CMSの支援により、アメリカ出張を行う機会をいただいた。今回の出張では、東海岸のボストン、ニューヨークを訪問し、私の研究テーマである憎悪言論(hate speech)規制と表現の自由に関する文献の収集を行った。
ボストンでは、ハーバード大学ロー・スクール図書館を訪れ、資料収集を行った。同ロー・スクールのキャンパスは日本のそれとは比較にならず、ボストンのケンブリッジに、ロー単体で日本の1つの大学に匹敵するほどの敷地を持っている。
同スクールの初代学部長であり、法学教育に革新をもたらしたChristopher Columbus Langdellの名を冠したロー・スクール図書館は、その蔵書数で他校を圧倒する。たとえばUS NewsのHPによると、ライバルであるイェールのローは1,230,913冊、コロンビアのローは1,142,994冊であるのに対し、ハーバード・ローは2,287,183冊である。日本の図書もたくさん所蔵しており、留学してもほとんど困りそうにない。電子ジャーナルやデータベースの豊富さ、司書の優秀さにおいても群を抜いている。そのとき滞在しておられた、大学院時代の先輩の案内により、様々な未知の資料に出会うことができた(特に未刊行の博士論文が貴重だった)。
ニューヨークでは、フォーダム大学ロー・スクールを訪問した。ここでは、同校のAssociate Deanであり、主としてLLMや海外客員研究員プログラム等に関わっておられるToni Fine氏のご助力を得て、図書館において文献収集を行った(同氏には六本木でのパーティーにご招待いただくこともあり、大変お世話になっている)。同校は日本で広く知られているわけではないが、学生の質は極めて高く、卒業生も顕著な活躍をしている。ニューヨーク内の伝統校コロンビア、NYUを追い越すまではいかないが、様々なランキングで上位に食い込んでいる。また、同校が発行するフォーダム・ロー・レビューの評価が非常に高いことも有名である。
同校ロー・スクールはマンハッタンのど真ん中にあるセントラル・パークの西方数10メートルに位置し、すぐ近くには有名な総合芸術施設、リンカーン・センター(Lincoln Center)がある。この地区はアッパー・ウエスト・サイドと呼ばれ、ジョン・レノンが住んでいたことでも有名である。ここには洗練されたレストラン、カフェ、アパートメントが並ぶ。フォーダムのキャンパスは小さいが、その立地を活かしてマンハッタンの巨大ロー・ファームに多くの人材を送り込んでいるそうである。
金融危機以降、アメリカの各ロー・スクールはこれまでにない苦しい状況にあるようだが、やはりその研究資源には圧倒される。