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第2回マイノリティセミナー

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ニュースレター

紀要

 

第2回マイノリティ・セミナー

「国民国家形成とマイノリティ」

「エストニアおよびラトビアのロシア語系マイノリティ問題の変遷」

報告者)小森宏美(京都大学地域研究統合情報センター助教、マイノリティ研究センター研究員)

「インディアス問題からマイノリティ問題へ-近代スペイン国家形成とインディオ」

報告者)松森奈津子(静岡県立大学国際関係学部講師、マイノリティ研究センター研究員)

司会 安武真隆(関西大学政策創造学部教授、マイノリティ研究センター「国家形成とマイノリティ」研究班主幹)

2008年12月20日午後2時より、関西大学以文館4階の会議室において、第2回マイノリティ・セミナーが開催された。今回は「国家形成とマイノリティ」研究班の研究員でもある小森宏美氏(京都大学地域研究総合情報センター助教)と松森奈津子氏(静岡県立大学国際関係学部講師)のお二人に、それぞれの専門の立場からに「国民国家形成とマイノリティ」という今回の共通テーマに関わるお話を頂いた。

小森氏は「エストニアおよびラトヴィアのロシア語系マイノリティ問題の変遷」と題して報告された。エストニアにおけるマイノリティ/マジョリティの関係は、ソ連邦の一部を成していた1940-91年とソ連崩壊後とで大きく反転した。固有の文化や権利の保護はあったもののロシア語が事実上の第一言語とされていたソ連邦時代とは対照的に、エストニアの独立回復後は共和国の独自言語が選択され、ロシア人には自動的に国籍が付与されず、就職や土地取得などで不利な扱いを受けかねない状況が生じたのである。さらに2004年のEU加盟後には、ロシア語系マイノリティが領域自治や民族文化自治要求を掲げるようになっている。小国であるエストニアは隣国かつ大国のロシア、そしてEUとの関係を意識しながら国内のマイノリティ問題を扱わねばならないことが指摘された。

松森氏は「インディアス問題からマイノリティ問題へ--近代スペイン国家形成とインディオ」と題して報告された。スペインが近代国家として形成される途上、選び取られた統合原理との関係で同化と排除の対象が歴史的に変遷していった。カトリック両王による複合君主政としてスタートした15世紀後半にはユダヤ教徒、イスラム教徒、改宗キリスト者が、「新大陸」と向き合った16世紀にはインディオが、さらにインディアスの征服そのものが既成事実化するに従ってプロテスタントが、そして19世紀以降は再編された地方主義との関係でカタルーニャ人やバスク人が、主要なマイノリティとして争点化されていったのである。 この中でも松森氏は、スペイン社会においてインディオが共同体外部の他者から内部の差異(マイノリティ)へと変化していった16世紀に注目され、サラマンカ学派の議論について概観された。


両報告を通じて、国家が形成されるモメントにおいては、Weと the Otherとの境界設定が不可分であり、したがって国家のアイデンティティの自己了解、他者了解の問題と関連していることが、改めて確認されたと言えよう。今後とも国家形成の比較分析を通じて、マイノリティ問題についての有意義な文節化が展開されることを期待したい。

(安武真隆)

 


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