およそ100人に1人は、生まれたときに心臓に何らかの問題を持っています。このように生まれたときから心臓に異常がある病気を“先天性心疾患”と呼んでいます。
先天性心疾患には、何も治療の必要がない軽いもの、自然治癒するものから、すぐに手術が頻度必要なものや難治性の重症なものまで、さまざまな病態があります。
わが国で多くみられるのが心室中隔欠損症や肺動脈狭窄で、早期に発見することができて、適切な時期に適切な治療を行えば、9割以上が完治します(図1)。
子どもの心臓はまだ形成途中であり、成長の過程で心臓自体の大きさが変わります。したがって、複雑で重症の心疾患の場合は、将来的な形や構造を予測して段階的に手術を施す必要があり、長期にわたるサポートとケアが必要になります。
このように、小児先天性心疾患ではしばしば段階的手術介入を必要とし、再手術の際に臓器損傷の危険の高い癒着剥離を行う必要があります。
しかしながら、癒着を軽減する既製品は現在存在していません。
そこで、生体適合性や生分解性に優れるゼラチンを用いた癒着予防材の開発を進めています。
ゼラチンの乾式紡糸法をベースにゼラチンナノファイバー不織布を調製し、臨床で要求される力学的強度、分解性、臓器への密着性等の実現を目指しています。