開腹などの外科手術の後の治癒過程で、本来離れているべき腹膜や臓器同士がくっついてしまう「癒着」が高い頻度で起こります。癒着は、疝痛や腸閉塞、不妊症などのさまざまな合併症を引き起こします。
現在、使用されている癒着防止材は膜状の薄いシートであるため、患部の形に合わせて貼り付けるのが難しかったり、食品用ラップのように一度折れてしまうと再び広げるのが難しかったりして、手術時のハンドリングが難しいという欠点があります。また、最近では侵襲度を下げるため、小さな開口部から内視鏡(腹腔鏡)を使用して手術をすることが増えてきましたが、そうした内視鏡下手術には使用することができません。
これを克服するため、体温でゲル化する吸収性ポリマーを用いて、使いやすくて、からだのどんな曲面にもフィットし、内視鏡下で塗布して使用することも可能な癒着防止材を開発しました。
さらにこの手法を止血剤や体内用接着剤にも応用する研究を推進しています。