KANSAI UNIVERSITY

関大研究STORIES SCIENCE TECHNOLOGY LABORATORY STORY

「目と目で通じ合う」しくみを解き明かし、
心の友と呼べるロボットを創る

総合情報学部 ヒューマンロボットインタラクション研究室
瀬島 吉裕 准教授

研究テーマ

コミュニケーションに果たす視線や瞳孔の役割を明らかにし、
愛されるロボットを創成する

誰かに何かを伝えたいときや相手の話に興味を持ったとき、人間の瞳は自然と瞳孔が拡大し、輝きを増します。それならば、ロボットに人と同じ瞳の変化を再現させると、人間らしさそのものとなって、心が通じ合うコミュニケーションができるのではないか? 瀬島准教授は「口ほどにものをいう」瞳の無意識の変化の研究を通して、人と人とのコミュニケーションの原理を探るとともに、「心の友」と呼べるロボットの創造に挑戦しています。

瞳が無意識に見せる雄弁なアピールを探る

コミュニケーションを行うとき、私たちは言葉だけでなく表情や視線、うなずき、ジェスチャーなど、言葉以外のさまざまな振る舞いや仕草を用いて意思疎通を図っています。瀬島准教授は多様な振る舞いの中でも、視線を生み出す瞳に着目してきました。「『目と目で通じ合う』という喩えがあるように、人が心の基底で意思疎通を図るときは、目から表出される情報が鍵になると考えています。特に、自律神経がつかさどる瞳孔は自分でコントロールできません。にもかかわらず多くの人は、たとえ言葉や文化が異なっていても相手の瞳から熱意や信頼感を抱きます。瞳に表れるどのような変化を見て『心が通じた』と感じるのか、その理由をロボットに人間と同じような視線行動や感情表現を行わせることで探っています」。その一つが、研究室に入るとまず目に飛び込んでくる大きな目玉です。眼球を模した半球ディスプレイは実物の約10倍のサイズに相当し、ランダムにまばたきをする他、視線を動かしたり外したり、瞳孔のサイズも自由に変えることができます。「人は、熱意をもって語りかけるときや、何かに興味を抱いたとき、瞳孔が拡大します。漫才を見て自然に笑えば瞳孔は広がりますが、作り笑いでは変化がない、つまり『目が笑っていない』んです。このロボットも、まばたきをし、会話に応じて瞳孔が変化すると一気に人間らしくなり、『生きている感』が出てきます」。実際、クマのぬいぐるみの眼球部分に拡大縮小できる瞳孔を組み込んだコミュニケーションロボットは、瞳孔を2倍に拡大した途端、愛らしく見えてくるから不思議です。「瞳の変化を何度も繰り返し再現できるロボットを用いて、心が通うコミュニケーションの本質を明らかにしたいと考えています」。

ロボットに実装することで見えてくる自然さ・不自然さ

瀬島准教授が最初に視線に注目したのは、高校時代に所属したバレーボール部でのこと。アイコンタクトで場の動きをつかみ、プレイの質を高められることに気づきました。また大学生のとき、交通事故で言語障害となった家族と視線によるコミュニケーションで意志疎通を図り、笑顔が戻った経験も、言葉を持たないコミュニケーションへの興味を後押ししました。大学院では母子間での引き込み(エントレインメント)現象を基盤としたコミュニケーションシステムを研究。さらに視線コミュニケーションへと進み、「会話が盛り上がると見つめ、落ち着くとそらす傾向がある」「集団に向かって話すときは、右側より左側を注意深く見ると場の一体感が高まり、好印象である」といった場の盛り上がりの研究にも携わってきました。その後は瞳、特に瞳孔に表れる「お互いがどう思い、どう伝えているのか」についての研究に本格的に着手。感情のこもった発話では瞳孔が1.5倍大きくなることなどを突き止めました。さらに、異能(Inno)vationプログラムの支援を受け、感情の高ぶりに伴う目の輝きの再現にも挑戦。当初採用した人工光源は目が内側から光ることに違和感があったため、着眼点を変更。目の水分量の増減による反射率の変化だと思い至り、涙腺、涙点、涙袋をロボットに実装。流す量とせき止める量を調整して自然な瞳のきらめきやあふれる涙を再現しました。こうして視線や瞳孔、涙といった要素をロボットに組み込みながら、コミュニケーションにどのような役割を果たしているのかをひとつひとつ確認してきた瀬島准教授。「実装することで、数値ではわからない違和感が明らかになります。情報を受け取るのは人間。人がどう感じるか、受け入れられるかが大事なのです」。

とぼけたり甘えたり。「心の友」と呼べるロボットを創りたい

関西大学に着任して1年。総合情報学部の学生は自分が興味を持ったことをとことん突き詰めるタイプが多いと瀬島准教授。「かといって、まじめ一辺倒ではない。枠にとらわれず、抜け道を探すのも得意。指導していておもしろいですね」。また、スタジオ棟に設置されたものづくりの専用スペース「MonoLab」には最新の3Dプリンタやモデリングソフトが整備され、常駐の専任スタッフが製作や加工に協力してくれます。この新しい環境を得て、瀬島准教授が次に取り組もうとしているのは、「興味を持っている」「熱心に聞く」「共感してくれる」と感じさせるコネクト・シグナルを出し、人との積極的な関わりを創り出すソーシャルロボットの製作です。例えば認知症治療では、「話す」ことが脳内活性に効果的であることがわかっています。発話を促す仕掛けを組み込み、飽きることなく使い続けられるソーシャルロボットなら、大きな治療効果を生むはずです。このしくみは、カウンセリングや看護、英会話のレッスンなど、さまざまな分野で場を盛り上げ、楽しませるロボット技術へと活用されそうです。さらに、瀬島准教授はソーシャルロボットに「気遣い」もプラスすべきだと考えています。人は友人や家族が落ち込んでいると、気持ちを察するかのように振る舞いますが、これをロボットに行わせようというのです。まばたきや視線、瞳孔などを通してリアルタイムに呼吸の乱れや感情の起伏を感知し、励ましたり甘えさせたり、共感してもらい泣きもする。そんな「心の友」と呼べるソーシャルロボットを創りたいと瀬島准教授は熱く語ります。「人は不完全や不十分さに興味を持ちます。ドラえもんはのび太の遊び相手や相談役であるだけでなく、時にはのび太に叱られたり元気づけられたりもする。おとぼけしたり、甘えたりする人間味のある“隙”や“遊び”を、ロボットで表現したい」。人とソーシャルロボットが「心の友」と呼べる豊かな関係を築ける日をめざして挑戦しています。

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