KANSAI UNIVERSITY

関大研究STORIES SCIENCE TECHNOLOGY LABORATORY STORY

ナノの技術で突き止める、新しい可能性

システム理工学部 機械工学科 ナノ機能物理工学研究室
伊藤 健 教授

研究テーマ

極小の世界を正しくとらえ、社会のニーズへつなぐ

例えばがんマーカーのように生体内に特定の物質が存在するかどうかを突き止める「バイオセンサー」。そして昆虫や動物など生物の体の構造や機能を模倣し、活用する「バイオミメティクス」。機械工学科では異色ともいえる伊藤教授の研究が今、注目を集めています。目に見えないナノサイズの世界に分け入り、そこで起こっているできごとを解き明かしながら、世の中に役立つ技術や製品への応用を探り続けています。

目に見えないものをバイオセンサーで探り当てる

機械工学科とバイオテクノロジー。一見、関わりがないようですが、実はそうでもありません。生体はさまざまなタンパク質から成り立っており、タンパク質には特定の物質にくっつくという性質があります。例えばAというタンパク質を見つけるには、AがくっつくBという物質を与え、物理的、化学的変化を測定すれば、Aの有無や濃度がわかります。このナノレベルの分析に、機械工学や応用物理学、電子工学などの幅広い知識と技術が必要となるのです。その点、伊藤教授の歩んできた道はまさに今につながっているようです。大阪大学で生物物理学を専攻し、遺伝子組み換え技術を習得。大学院を経て就職した神奈川県の公設試験研究機関では、多種多様な分析のスキルが鍛えられました。「素材と測定方法を変えることで、それまで見えなかったものをとらえる革新的なセンサーを創ることができます」と伊藤教授。積み重ねた豊かな経験をベースに、学内の創薬や微生物の研究室とも協働。現在はストレスマーカーの計測技術や創薬に必要な分析ツールの開発に取り組んでいます。

人体に影響のない夢の抗菌材、ヒントは「セミの翅」

伊藤教授の研究の中でも、TVや新聞に取り上げられ話題となっているのが、セミの翅の抗菌性に着目したバイオミメティクスです。バイオミメティクスとは、生物が進化の過程で作り上げた独自の構造や機能を、さまざまな分野に応用する研究で、サメ肌を模した水着をオリンピック選手がこぞって採用したことで一躍有名になりました。伊藤教授が研究をスタートさせるきっかけとなったのは、2012年、オーストラリアのグループが発表した「セミの翅が抗菌性を持つ」という報告です。「まさかそんなことはないだろう」と疑いながらも、かつて昆虫少年だった伊藤教授の好奇心は大いに刺激されました。さらにセミの翅が、極小の突起が並んだ生け花の剣山のような構造をしているのを見て、「これなら自分たちで作れる」と直感。早速キャンパスでクマゼミを捕まえて翅のナノ構造をつぶさに観察し、その構造を人工的に作製することに成功しました。この構造に大腸菌を含んだ培養液を滴下したところ、見事に大腸菌が死滅したのです。現在はナノ構造に触れた大腸菌が壊れるメカニズムをあらゆる角度から丹念に掘り下げ、検証を行っています。これまで抗菌材といえば抗生物質や銀イオン、塩素など、人体への影響や持続性が懸念されるものがほとんどでした。伊藤教授がつくるナノ構造は、新次元の抗菌素材として大きな可能性を持っています。

専門家と連携し、海外のスピードに対抗

海外でセミの翅の応用研究を行うグループは、国を越えて連携しています。優秀な頭脳が集まり、スピード感もある彼らにどう対抗するか。「自分たちでできることは限られているので、その道の専門家と一緒にやっていくチャンスを常に探しています」と伊藤教授。セミの翅の実験に必要な特殊な大腸菌の生成は、国の機関であるNICT(情報通信研究機構)が持つ遺伝子組み替え技術とコラボすることで大幅に進展しました。さらに国内のさまざまな機関や企業とも協働。微細加工や電子顕微鏡など設備が充実し、研究室の人数も多い本校の強みも、条件を変えて同時進行で実験を進める機動力に、ダイレクトに生かされています。「だれも知らなかったことがわかり、世の中の役に立つ技術や製品にもつながる。それが研究の醍醐味です」と目を輝かせる伊藤教授。自分たちの研究を社会に還元するという目標を果たすためにも、現在の取り組みをさらに深める一方で国内外にアンテナを張り、新たな鉱脈を探すことも怠りません。学生の発案でアリジゴクの生態について調べたこともあるという柔軟性と、虫を追いかけた少年時代から変わらぬ旺盛な好奇心を原動力に、研究室が一丸となった挑戦が続きます。

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