KANSAI UNIVERSITY

関大研究STORIES SCIENCE TECHNOLOGY LABORATORY STORY

つながりを生むコミュニティへ
「豊かに生きる場」をデザインする

環境都市工学部 建築学科 建築環境デザイン研究室
江川 直樹 教授

研究テーマ

人が集まって住むカタチをリノベーションし 、コミュニティを育む

入居者の減少に悩む団地や、高齢化が進む農山村に再び元気を取り戻すには、空間を刷新するだけでなく、コミュニティの活性化を織り込むことが不可欠です。人が集まって住む環境のデザインに長年携わってきた江川教授は、建物の設計だけで終わる関係ではなく、研究を通して、設計・教育・地域連携など様々な角度から、ひとつのプロジェクトと継続して向き合える大学の立場を生かし、住民や行政、事業者と新しい関係を築きながら「豊かに生きる場」のデザインを追求。その研究と実践は、「豊かで持続的な集住環境への再編に向けた技術の普及啓発」として評価され、平成30年度 文部科学大臣表彰「科学技術賞(理解増進部門)」を受賞しました。

“場所の声”を聞くまちづくり。お手本は「集落」

江川教授は「人が集まって住む団地を『集落』に変えたい」と話します。人々の関わりが限定的となる都市の住宅地に対し、集落とは、土地の気候風土をうまく取り入れ、人々が知恵を出しながら寄り添い合って生きてきたコミュニティの原型です。不定形の住まいが混在し一見ごちゃごちゃしていますが、風の通り道や見晴らしを確保し、生活のための路地が最も便利な場所を行き交うなど、江川教授がまちを設計する際のテーマとして掲げる「場所の声を聞く」ことが、ごく自然になされています。
江川教授が携わった阪神淡路大震災の復興住環境整備でも、何もなかったところに一から設計するのではなく、そこにあったまちのたたずまいを引き継ぐ復興を、同じ阪神間に居住する専門家として提案、住民や行政、他の専門家との協議のなかで実現方法を探っていきました。設計とは場所の声を聞き続ける作業で、設計プロセスの重要性を社会に主張し続けています。
今やまちづくりは、既存の土地や建物をどう再編するかというリノベーションの時代へ転換しています。直線的な区画へ一律に造成するのではなく、住民にとって愛着のある風景を残し、生活感を受け継ぐデザインが求められます。空間の設計にとどまらず、コミュニティの活性化や、住民がより暮らしやすい環境づくりのための制度の改変まで、効率主義ではない人間主義の視点がますます重要になっています。

共に生きる喜び
「持ち寄りBarからカヌー作り」まで

八幡市男山団地の再編プロジェクトでは、2012年から隔週で、行政とプロジェクトチームが大学に集まり忌憚のない意見交換を重ね、事業者と協働する仕組みを考え、翌年からのUR都市機構の参加へと繋げました。こうして課題や提案を共有しながら、江川教授と研究室のメンバーはコミュニティに向けてさまざまな働きかけを行い、成果を生み出しています。
夏休みに子どもたちのために始めたラジオ体操は、それまで家にこもりがちだった高齢者を誘い出すきっかけになりました。毎日きちんと服を着替え、身なりを整え参加することは、生活にリズムを与え、孤立を防ぎます。お弁当を作って一緒にハイキングに出かけるグループもできるなど、新たな生きがいにもつながっています。また、月2回オープンする持ち寄りのバーでは、手作りのおつまみや好みの飲み物を手に、幅広い年齢層の住民がおしゃべりする光景がおなじみになりました。「一人で暮らしていたおばあちゃんたちが、さまざまな人とつながることで、誰かのために作る喜び、誰かのために生きる人生を思い出したのです」と江川教授。
男山団地では若い子育て層や多様な新規住民を呼び込むための住戸リノベーションから、以前から住んでいる住民が自分たちで住戸改修し豊かに住み続けることのできるような仕組みの実現、そのための支援など、住環境総体の再編に取り組み、「住んでみたいまち」となって、空き家の減少や住民の低年齢化を実現しました。 また、河内長野市の南花台プロジェクトでは、学生が住民とともに地元の豊富な森林資源を用いたカヌー作りに挑戦。高齢者から小さな子ども、そのお母さんまで多世代の人を巻き込む楽しみの連鎖がコミュニティを活性化させるきっかけとなっています。

365日腰をすえる、大学のチカラ

江川教授の研究室では大学院生が主体となり、さまざまな専門家と横のつながりを持ちながら多くの団地やまちのリノベーションに取り組んでいます。実際に現地に住み込んで、365日オープンな拠点を設け、コミュニティの一員としてプロジェクトを動かしているのです。このように、通常の発注者と受注者の関係では難しいことも、研究と実践を行う大学なら、長期に渡り腰を据えて関わることができます。さらに学生が頑張っていると、まちの人もやさしく受け入れ、協力してくれます。これらの総体こそが大学の持つ大きなチカラだと江川教授は考えています。毎年入れ替わる学生では、プロジェクトに長く関われないのでは?という声もありますが、江川教授は、むしろ人の輪がどんどん増えていく持続力だと熱く語ります。実際、卒業後も通い続けているメンバーも多く、久しぶりに現地を訪れた際には、住民と「おかえり」「ただいま」の明るい声が交わされます。
フィールドの異なる大勢の人が線的・面的につながり、コミュニティを醸成する。学生にとって第2のふるさととなっていく。現地での活動が専門家としての生きがいとなり、結婚して根を下ろした教え子もいるという江川教授と研究室による「社会実験」は、大学と地域が連携して21世紀の集落をつくる、新たな地域再編モデルを生み出していきます。

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