KANSAI UNIVERSITY

関大研究STORIES SCIENCE TECHNOLOGY LABORATORY STORY

“金属の親戚”から「優しい抗がん剤」を

化学生命工学部 化学・物質工学科 錯体機能化学研究室
中井 美早紀 准教授

研究テーマ

副作用の少ない抗がん剤をめざして

世界中で“がんに効く”新たな薬剤の研究・開発が進められていますが、実はがん細胞自体を攻撃する薬の開発は、難しくありません。問題は副作用をいかに抑えるか、です。既存の抗がん剤を用いた場合、がん細胞とともに周辺の正常な細胞をも傷つけてしまい、患者さんは脱毛や嘔吐といった副作用に苦しめられます。そこで研究者は、副作用の少ない「体に優しい抗がん剤や治療法」を目指すわけです。その一つが光線力学療法です。中井准教授の研究室では、この学療法を応用した新しい抗がん剤の開発に取り組んでいます。

がん細胞を抑さえこむ金属錯体を
光線力学療法に応用

「光線力学療法とは、光に反応する薬剤を患者に投与し、がん細胞に薬剤が集積されたのを見計らって光を照射する療法のことです。光を当てた部分だけが、がん細胞に働く毒性を生み出すことで薬剤が全身に行き渡らず、他の正常な細胞への影響を最小限に止められます。
そして、この「光に反応する薬剤」の開発に用いられる物質の一つが錯体です。錯体とは金属を主とする原始・イオンの周囲に、配位子(はいいし)と呼ばれる、イオンあるいは分子などが結合した「金属の親戚」です。つまり錯体を構成する金属の種類によって様々な親戚が生まれるのですが、その中からがん治療に適した化合物を探ります。例えば、抗がん剤として広く用いられているシスプラチンは白金の親戚ですが、脱毛などの副作用があります。
一方、光線力学療法の現場ではポルフィリン化合物という、金属の親戚とは別の有機化合物が使われていますが、これにも「体外への排出に時間がかかる」などの欠点があります。そこで中井准教授たちはこれらに代わる、より効果の高い「親戚」を探しているのです。

貴重な医師ら異分野との交流

研究では、学会などで医師をはじめとする異分野の方と交流する機会も少なくありません。そこでの気づきが研究に生かされることもあり、特に臨床で薬剤を実際に使用する医師の意見は貴重な情報源となっているようです。
実際に、中井准教授が医師とのやりとりを通じて意識するようになったのが「水溶性の向上」です。がんに毒性を発揮する薬剤は体内にも副作用をもたらします。いくら薬剤がすばらしいものでも、水に溶けやすくして体内から排出しやすくしなければ、実用化は難しいというわけです。中井准教授の研究室では、水溶性を高める糖質を導入した亜鉛錯体を開発し、この技術を光線力学的療法にも応用できないかを検討しています。

地道な研究を支える中井准教授の笑顔

上記以外でも、レントゲン撮影でがん細胞の位置を確認する「核画像診断剤」としての金属錯体の開発など、中井准教授の研究室では複数の研究が並行して進められています。どのテーマにおいても、実験はトライ&エラーの繰り返し。そこでは地道な作業と考察を積み重ねる忍耐強さが求められますが、研究室の雰囲気はというと、意外なほど明るいのが印象的でした。それはいつも笑顔を絶やさず、快活に振る舞う中井准教授の人柄も大きく作用しているようです。実際に、中井准教授と学生との距離は近く、いい意味で「先生と学生」といった距離感のない、自然なコミュニケーションが交わされていました。
学生にとっては、上手くいかないときに励まし合える仲間の存在はもちろん、いつも明るく、しっかりと支えてくれる教員の存在は大きいでしょう。そんな中井准教授の朗らかな雰囲気が、錯体機能化学研究室の魅力にもなっています。

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