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入学式学校長式辞を掲載しました

平成二十三年度 関西大学中等部・高等部入学式
「式  辞」

暖かな春の訪れが感じられる今日の良き日、関西大学中等部、並び高等部に入学された新入生のみなさん、入学おめでとうございます。
お子さまとともに入学式にご出席いただきました保護者の皆さま、お子さまのご入学、誠におめでとうございます。
心よりお慶び申し上げます。
また、本日の入学式を挙行するに際し、ご臨席賜りました 学校法人 関西大学 理事長 上原洋允様をはじめとするご来賓の方々に、心より御礼申し上げます。

さて、新入生のみなさん、いよいよ今日から中等部、高等部の生徒としての生活が始まりますが、新しい学校生活をスタートするみなさんに、学校長としてのメッセージを贈りたいと思います。

それに先立ち、三月十一日に発生しました東日本大震災により被害に遭われた方々に、哀悼の意を表しますとともに、心よりお見舞い申し上げます。
マグニチュード九・〇、震度七を観測する巨大地震と大津波。
想像を絶する自然災害により被災された人々を前にして、第一期生の生徒たちは、震災直後に募金活動をはじめ、今も、何ができるかを考えています。
大震災は、自然災害と防災、原子力問題や経済、国際問題など多岐にわたる課題を提起していますが、高等部では安全科学の教育を通し、個々の課題について、考えていこうとしています。

それでは、新入生のみなさんに校長として、伝えたいことを話します。
それは、関西大学中等部・高等部への思いと、ここで学ぶ君たちに期待すること、についてです。

関西大学中等部・高等部の教育目標は、「二十一世紀の世界を切り拓く「考動力」豊かな人間を育てること」であり、「高い倫理観と品格をそなえた「高い人間力」をもった人材を育てること」です。

みなさんは、江戸時代末期、大阪で活躍した医学者の緒方洪庵という人を知っていますか。
私が尊敬する歴史上の人物のひとりです。
緒方洪庵は、名を求めず、利を求めない医学者であり、教育者でした。
幼い頃から体の弱かった洪庵少年は、当時主流であった漢方の医学ではなく、蘭方医学(オランダの医学)を学びたいと考え、大阪で基礎を学び、江戸に出て学問を深めます。
そして、二十六歳の時、長崎に行き、医学はもとよりヨーロッパの科学についても深く学び、二十八歳の時、大阪に帰ってきます。
そして、蘭方の医学者として活躍します。

当時は、鎖国が続いていた時代で、外国との国交は長崎だけに限られ、ヨーロッパの国々では、オランダだけが交易を許されていたのですが、洪庵は、長崎で医学だけでなく、西洋文化にも触れ、ここで学んだことを新しい時代を担う青年に託そうと考えました。
そして、大阪に「適塾」という私塾を開きました。
「適塾」には、全国から若者が集まり、お互いに学び合ったのです。
その中には、大村益次郎や福沢諭吉など明治時代に活躍した多くの人たちがいます。
「適塾」は、現在も大阪市北浜に残っていますが、そこを訪れると今でも明治維新の息吹を感じることが出来ます。

関西大学中等部・高等部が開校するとき、私は「適塾」を訪れ、新しい学校への夢をふくらませました。
新しい時代を切り拓く青年を育てた適塾と、そこで学んだ若者たちに思いを馳せながら、私は、関西大学中等部・高等部を、「二十一世紀の世界を切りひらく人材を育てる学校にしたい」という思いを強く抱きました。

君たちが通学する正門前の道は、かつて「西国街道」といわれた江戸時代の主要街道で、我が国の近代国家である明治時代を切り拓いた多くの人たちが行き交った歴史の道です。
歴史と自然に恵まれたこのキャンパスから君たちが大きく羽ばたき、二十一世紀の世界を切り拓く人間になってくれることを期待しています。

開校から一年。
多くの人たちに支えられ、一歩ずつ取組を進めてまいりました。
中等部では、知的好奇心を高め、基礎的・基本的な知識や技能を定着させる教育に、高等部では、進路を切りひらく高い学力と大学で学ぶ基礎となる探究能力を育てる教育に力を注いでいます。
各教室には、我が国で最も優れた情報機器を備え、これを活用した教育を展開し、国際理解教育にも力を入れ、すでに、シンガポールやドイツ、カナダやオーストラリア等の生徒と国際交流を行う取組なども進めています。
新入生のみなさん、このキャンパスで充実した学校生活を送ってください。

最後に、君たちに次の言葉を贈りたいと思います。
中国の古典である「論語」の中に曾氏曰わく、「君子は、文を以て 友を会し、友を以て仁を輔(たす)く」
いろんなことを真剣に学んでいると、同じようにがんばっている友達に出会うことができる。
その友達といっしょに学び、思いやりの気持ちがあり正しい行いのできる人になりたいものである。
という意味の言葉です。
「君子は、文を以て 友を会し、友を以て仁を輔(たす)く」

緒方洪庵が開いた「適塾」では、先生は洪庵ひとりでした。
洪庵先生は、病人を診療しながら教えますから人手が足りません。
そんな中で優秀な人材が育ったのは、塾生一人ひとりが自学自習に努め、お互いに切磋琢磨、教えあいながら誰もが一生懸命勉学に励んだからだと言われています。

新入生のみなさん、百二十五年の歴史と伝統のある総合学園 関西大学の一員としての自覚と誇りをもち、初心を忘れず、一日一日を大切にし、友達とともに、勉学に励んでください。
東日本の被災地では、入学式を迎えることさえできない多くの中学生や高校生がいることを忘れず、自分にできることは何かを問い続ける人であってください。
私は、一人ひとりが力を合わせれば、乗り越えられない困難はないと思っています。
みなさん、未来を信じ、力強く歩んでください。
私は、そのことを願っています。

古来、中国では、豊かな人生を過ごすには、三つの出会いが必要であると言われます。
一つは、良き師、良い先生に出会うこと。
二つは、良き友、良い友達に出会うこと。
そして、三つは、良き書、良い書物に出会うことであると。
本学では、この三つを準備しています。
三つの出会いにより、充実した学校生活を実現してください。

最後になりましたが、保護者の皆さま、改めまして、お子さまのご入学おめでとうございます。
私ども教職員一同 保護者の皆さまとともに、手を携えてお子さまの成長のため、努力する決意でございます。
保護者のみなさまには、お子さまの成長と本学発展のため、ご支援とご協力を賜りますよう心からお願い申し上げまして、私の式辞といたします。

平成二十三(二〇一一)年四月七日
      関西大学 中等部
      関西大学 高等部
   校 長   米 津 俊 司

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