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教員が語る専門領域の魅力 vol.14

田島 義士 准教授

素敵なタイムトラベラーになるために
田島 義士 准教授
Profile
「専門はフランス文学(19世紀の詩と色彩表現)とフランス文化論(衣食住について)。最近はフランス語教授法や翻訳にも興味を持っています。」

不思議のはじまり

 ふと気がつくと聴こえてくる、あのメロディ。もうこんな時間か。そろそろ行かなくちゃ。

 たとえば、図書館で「蛍の光」によく似たあの曲が聴こえてくると、どうして人々は読んでいた本を閉じ、帰り支度をするのでしょう。他にも、トイレの入り口には赤や青のマーク。信号機は3色で、横断歩道は白。そうこうしていたら後続車からクラクション。けたたましいサイレンと共に真っ赤な消防車が・・・。
 世の中には不思議なことがいっぱいです。こうした音や色が意味するものは昔から同じなのでしょうか。海を隔てた国でも同じ意味をもつのでしょうか。そして、私たちが普段、目や耳にする言葉も常に同じ意味をもつものなのでしょうか。

タイムマシーンなんていらない

 私は、今から150年ほど前に書かれた作品を読むにあたり、当時の文化的背景を調べてみます。今でも理解できる言葉で書かれているからといって、その内容を自分の文脈で読んでしまうと、意外な落とし穴にはまってしまうことがあります。時代や国を隔てる時、人々のもつ知識、社会の常識やルールといった知の枠組みが異なる場合があるからです。
 詩人も作家も画家も建築家も服飾デザイナーもみんな、その時代や場所に固有の文化を資本とし、自らのオリジナルを作ろうと努めてきました。何がベースにあって、何を新しくしようとしたのか。それを知るために当時のことを調べてみるのは大切なことです。そうした上で、はじめて今の「私」にも通じる普遍的なものを理解することができるのではないでしょうか。たくさんの資料に囲まれている時、私たちはタイムトラベラーになるのです。

「見つかったぞ」「何が?」

 子どもの頃、閉店間際に流れる音楽やトイレの色分けを不思議に思った方もいるのではないでしょうか。はじめて見聞きするものに出会った時、私たちはそれまでの知識や経験を振り返りつつ頭をフル回転させます。それでも簡単には理解できないことに出会う時もあるでしょう。そんな時に、「わからないからいいや」とか「私には関係ない」や「個人の問題だ」としてしまっては、大学での最大の魅力のひとつである「研究」を行うことはできません。
 19世紀に書かれた詩のほんの数行を読み解くために、私はフランスまで行くことがあります。詩人が過ごした場所に赴き、書物を調べ、当時の風景や生活に想いを馳せます。その時、時代と空間を超えて、私は詩人と向かい合っているのです。不思議に思うことに出会ったら、時間をかけてでも海を越えてでも、自分なりの答えを見つけることが研究なのです。

学生のみなさんへのメッセージ

Elle est retrouvée.見つかったぞ
Quoi ? L’éternité.何が? 永遠
C’est la mer alléeそれは太陽と
Avec le soleil.共に行った海

次にお会いするまでに、この引用が誰のものか調べておいてください。