1. トップ
  2. 教員が語る専門領域の魅力
  3. 教員が語る専門領域の魅力 vol.14 高梨 信乃 教授

教員が語る専門領域の魅力 vol.14

高梨 信乃 教授

外へ開かれ、内を照らす~日本語教育という仕事

高梨 信乃 教授

Profile 専門は日本語教育と日本語学(現代日本語文法)。学習者にとって真に役に立つ文法を求めて、教育現場と文法理論の両方向から検討を進めている。

日本語教育と出会って

 外国人に日本語を教えるという職業があることを私が知ったのは、学部2年生の時です。日本語教師が、英語教師などと同様の専門職として認められはじめた時期であり、たまたま手に取った雑誌で「日本語教師養成」という特集記事が組まれていたのです。ことばについて考えるのが好きだった私は、目の前にぱっと道が開かれたように感じました。私のやりたい仕事はこれだ!と。大学院在学中から少しずつ教え始め、以来、ずっと日本語教育という仕事とともに歩んできました。どれだけ長く続けても、この仕事は難しく、また、飽きることがありません。

日本語教育の魅力

 日本語教育は、日本の外へ向かって開かれた窓のような仕事です。相手である学習者は例外なく外国人ですから、教師は常に異なる言語・異なる文化と接し、それについて考えることになります。それは時に困難を伴いますが、刺激的で楽しい経験です。同時に、日本語を外国語として学ぶ学習者とともに日本語を見るとき、また日本という国を見つめようとする時、教師の視線は逆に内へと向かいます。そして、そこに普段意識することのない、自分の母語や自国の文化についての気づきが得られるのです。このように、外へ、また内へ、両方向に目を開かせてくれるのが日本語教育の大きな魅力だと思います。

教育現場から拾い上げる研究のタネ

 日本語という言語は、さまざまな観点、立場、方法により長く研究されてきました。日本語教育を目的とした研究に限っても、多くの蓄積があります。しかし、わからないことや気づかれていない問題はまだまだ残されています。たとえば、ある日のゼミで、発表者である留学生が冒頭に「今日は◯◯について発表します。では、始めましょう」と言いました。この発話は不自然ですよね。「始めます」とか「始めたいと思います」が適切です。しかし、教師が授業を始めるときに「では、始めましょう」というのは、ごく自然です。学生が言うと、なぜ不自然になるのでしょうか。この疑問をきっかけに、私は最近、意志表現を考えています。このように、教育現場での気づきが研究につながることは少なくありません。

学生のみなさんへのメッセージ

 日本語教育に関心があるならば、まずは、日本語学習者と交流してみましょう。キャンパスの中にも留学生はおおぜいいます。また、みなさん自身が海外へ留学した時も、日本語や日本について考える貴重な機会です。外へ、内へ、目を開いてください。