1. トップ
  2. 教員が語る専門領域の魅力
  3. 教員が語る専門領域の魅力 vol.6 近藤 昌夫 教授

教員が語る専門領域の魅力 vol.6

近藤 昌夫 教授

樹の生長する速さで、

キツツキのようにこつこつと、

蜜をさがす森の熊のように。

近藤 昌夫 教授

Profile

チェーホフを中心に19世紀ロシア文学を学んでいます。


聖像画イコン(『聖ゲオルギーの龍退治』)

 近代のロシア文学は、「北のヴェネツィア」サンクト・ペテルブルグを主な舞台にしています。「ロシア文学はペテルブルグとともにうまれた」といわれるほど、この町は様々な作家を輩出しています。プーシキン、ゴーゴリ、ドストエフスキー、ブローク、ベールイ、ブロツキーなど、枚挙にいとまがありません。ということで、最近は都市を触媒にしてロシア文学を勉強しています。
 ペテルブルグは18世紀に、ピョートル大帝によって強引に建造された文明の象徴です。そのため、捻れを抱えたまま成長して行きました。幻想都市、神話都市、宮殿都市、人工都市、革命都市など、変幻する様々な顔にロシアの複雑な表情があらわれています。捻れを写し取った文学作品からロシアを再現する作業を続けているのですが、プーシキンの幻想都市に熱狂し、ゴーゴリの不条理都市に笑い転げ、ベールイの象徴都市に迷い込み、気がつくといつもまた振り出しに戻っています。おまけに西欧中世文学以来の地獄巡りの伝統まで抱え込む街なので、なかなか全体がつかめずに呻吟するばかりです。
 もうひとつの関心はロシアの視覚的思考です。聖像画イコンや、イコンが世俗化した民衆版画ルボークなどの伝統的視覚表現は、ロシア人のものの見方や表現方法にどのような影響を与えているのだろう。中世聖堂都市モスクワとの関係でも興味引かれるテーマなのですが、キリスト教と関わりの深い素材なので、浅学菲才の身にはこれまた難題です。
 研究は、「樹の生長する速さで、キツツキのようにこつこつと、蜜をさがす森の熊のように」と構えていたら、「少年老い易く学成り難し」が他人事ではなくなってきました。
 主に教養ロシア語を担当していますが、外国語学部でもロシア語総合を担当させていただいております。関西大学のロシア語教育は、ピロシキやボルシチ作り、学内朗読コンクール、関西ロシア語コンクール、関大3セミなどの「活動PDF」と、歴史、社会、民族、芸術関連の様々な「共通科目PDF」との連携によって、広く、深くロシア語を理解してもらうことを目標にしています。


サンクト・ペテルブルグ(スリコフ『元老院広場のピョートル1世記念像』)


モスクワ(ワスネツォフ『17世紀後半の赤の広場』)

学生のみなさんへのメッセージ

 皆さんには、私のロシア文学の先生がしばしば引き合いに出されたロシアの格言から、「学びは一生のこと」を、また、とくに二十を迎えた皆さんで、いよいよ学問を究めたいというあなたには、私の比較文学の先生の信条「学酒合一」をご紹介したいと思います。