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From the Alphabet of Old Friends (1875). Facsimile edition reproduced from the Osborne Collection of Early Children’s Books, Toronto Public Library by Holp Shuppan.
外国語学部では、「英語総合」を担当しています。英語で書かれたテキストの内容や筆者の立場を正確に読み取り、それに対して、自分の考えが明確に人に伝えられるよう、練習を積んでいきます。それと同時に、主にストーリーを題材として、継続して読む姿勢を身につけることを目指します。この二つを手に入れることで、さまざまな状況で、そのテキストにふさわしい読みができるようになります。それは、みなさんの一生の宝となります。
また、ストーリーをたくさん読んでもらうのは、そこに描かれているひとびとの経験を通していろいろな生き方に触れ、そうして、他のひとの視点にたって考えることができる余裕のある人になって欲しい、と考えるからです。
関西大学図書館所蔵
絵本や児童文学は、こどものためのものと思っていらっしゃる方が多いのではないでしょうか。しかし、絵本や児童文学は、おとなに対しても重要なメッセージを発しています(参照「わたしのくすり箱」関西大学外国語学部『外国語学部紀要』創刊号)。
こども向けの絵本は、17世紀、 J. A. コメニウスというチェコスロヴァキアの教育者が、世界や生活におけるいろいろなことがらを、こどもに理解しやすいようにと挿絵入りで説明した本『世界図絵』(1658)に始まったとする説があります。その後、印刷技術の発達とともに絵本は発展し、イギリスでは19世紀後半に黄金期を迎えます。みなさんもどこかで目にしていると思いますが、かわいいこどもたちの遊ぶ姿などをよく描くKate Greenaway (1846-1901)(写真1)や、今も児童文学賞のタイトルとして名を残すRandolph Caldecott (1846-86), そしてWalter Crane (1845-1915)(写真2)などがその才能を開かせました。一方アメリカ合衆国では、絵本制作が盛んになるのは大恐慌の起こった1929年ごろから30年代でした。そこでは、さまざまな国から移民としてやって来た芸術家たちが、多様な絵本のスタイルを生み出しました。
こうした絵本の歴史を考えるとき、そこには、こどもに対する社会の考え方や教育観の変遷、そしてテクノロジ―の発達や、世界的な人々の動きに伴う文化の継承が、大きく反映されていることがわかります。
また、日本の絵本の歴史では、外国語を勉強するみなさんに特に興味深い絵本が、明治時代半ばに登場していました。関西大学図書館にも収蔵されていますが、主に長谷川武次郎という人が発行した「ちりめん本」といわれるもので、その名のとおり、和紙を揉んで、まるで縮緬の布のような柔らかさにしたものに絵と文字を印刷したものです。日本のおとぎばなしが英語やスペイン語、フランス語などに訳されて、外国の人のおみやげとして珍重されていたようです。ときには、こんな珍しい本で外国語のレッスンというのも、おもしろいかもしれませんよ(参照「関西大学図書館所蔵ちりめん本の整理」関西大学外国語学部『外国語学部紀要』No. 2)。
みなさんも、絵本を楽しんでみませんか。それと同時に、それらの作品を生み出した社会や文化、そして世界の動きを知ることができるのも、絵本・児童文学の世界の魅力です。
絵本に用いられる絵は、かつては散逸してしまうことも多くありましたが、最近では、その芸術性が高く評価されるようになり、原画を作品として残す必要が強く指摘されています。特に日本には、絵本の原画を専門的に扱う絵本美術館が数多くあります。みなさんは、これから旅に出られる機会も増えるでしょう。そんなとき、絵本美術館を訪ねてみられてはどうでしょうか。絵本に仕上がったものと原画とでは趣が異なり、新しい発見があることでしょう(参照「国内の絵本美術館・児童図書館を訪ねて」関西大学外国語学部『外国語教育フォーラム』No. 9)。