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教員が語る専門領域の魅力 vol.5

菊地 敦子 教授

自分の経験をどう捉えるか。日本語で表現するのと英語で表現するのとでは、違う場合がある。その違いと類似点を探る。 

言語学 菊地 敦子 教授 

Profile 専門分野は認知言語学。人が経験する世界を日本語はどのように捉え、英語はどのように捉えているのかを比較研究。そして、各言語における経験の捉え方の違いは通訳・翻訳のプロセスにどのような影響を及ぼすのかを検証。長年に渡る海外経験と通訳経験を活かして研究を続けている。

日本語の世界観と英語の世界観

 車の運転手が座る席というのはハンドルの前だと思いますか、後ろだと思いますか?「ハンドルの前に決まっているじゃないか」と言われるかもしれません。でも、英語では運転手は He sat behind the wheel と言って、「ハンドルの後ろに座る」と言います。この違いは、運転手をどこから見ているかによるものです。もし後部座席あたりから運転手を見たら、確かに運転手はハンドルの前にいます。でも、車のヘッドライトあたりに立って運転手を見たら、運転手はハンドルの後ろにいることになります。どちらが正しいというわけではありません。たまたま、違う視点から見た言い方がそれぞれの言語で定着しているのです。
 このように、目に入ってくるものをどのように捉えるかは、英語と日本語とで違うことがあります。目に入ってくるものだけでなく、抽象的な体験を表現する時も英語と日本語とでは違うことがあります。日本語では「失恋から立ち直る」と言いますが、英語では I’m over him と言って、直訳すると「彼を乗り越えた」と言います。英語の直訳を聞いて、日本人でも、どういうことか理解できると思いますが、「乗り越えた」というと何か前に進んで行く感じがしますが、「立ち直る」というとあまり方向性は感じません。ということは、日本語話者と英語話者とでは、失恋そのものに対する考え方が違うのでしょうか。そうだとしたら、日本語にとらわれて生きているのと英語にとらわれて生きているのでは、人生がずいぶん違ってくるのかもしれない?!
 私の研究はそういった日英の概念の捉え方の相違点や類似点を考えることです。

日本語の世界を越えて

 外国語を学ぶということは、新しいものの見方を学ぶことです。失恋から「立ち直る」だけでなく、彼/彼女を「乗り越えて」生きて行く世界も知ってみませんか?そして、たまには、ハンドルの「後ろ」に座って運転してみませんか?
 私が学部で担当している「英語オーラル・コミュニケーション1」、「上級外国語1」英語」のクラスでは、日本語を一切禁止して、英語の世界にとっぷり浸かってもらいます。いつまでも日本語をそのまま英語に訳していたのでは、本当の英語の表現に出会うことができません。こんな場合には、こんな言い方をするのかという発見をしてほしいのです。それによって、始めて日本語の世界から解放され、英語の世界を見つけることができるのです。
 「通訳論1」のクラスでは、まず英語の音声を聞きながら、ほぼ同時に、すべてのことばをそっくりそのまま正確に繰り返し発音するシャドイングから始めます。英語の音声をしっかり認識する訓練です。その後、ある程度の長さの英文を最後まで聞き、一時的に記憶にとどめ、原文をそのまま口頭で再現する練習、または、原文の意味をとどめて、違う表現を使って再現する練習をします。はじめは短い文で、徐々に長い文を聞いて練習します。耳で聞いた英語を自分で言う練習です。シャドイングと違って、聞きながら繰り返すのではなく、聞き終わってから再現するので、記憶保持の練習になりますし、表現力の強化になります。
 「翻訳論」の授業では、新聞記事から子供の本、映画の字幕まで、様々なテキストを扱い、原文はだれが、だれに対して、どのような目的で書いているのかを考えながら訳す練習をします。ここでは、英語だけでなく、日本語の表現力も養われます。

学生の皆さんへのメッセージ

 人間というのは、努力しだいで無限の可能性を持っています。日本語の世界の外に英語の世界を見つけるというのは、ほんの小さなきっかけにすぎません。英語を知ることによって、日本語の深さを知ることができます。そして、さらに第2外国語を勉強すれば、世界はいろいろな見方ができるということを知ることでしょう。そんな風にして、どんどん自分の世界を広げて行けたら楽しいと思いませんか?そして、言語、国境を越えた自由にはばたく人間になって下さい。