「言葉と社会」「言葉と心理」の関係に注目し、言語教育学の視点から異文化コミュニケーションについて研究し、大学院で「異文化間コミュニケーション論」「第2言語コミュニケーション論」の授業を担当しています。特に注目しているのは、異文化背景を持った人が出会う場面での第2言語を使ったコミュニケーションについてです。それぞれの人が内面化した文化スクリプト、すなわち、行動の筋書きの違いが、どのように相互理解に影響するかに興味があります。また、滑らかに自分の意思や気持ちを伝えることができる第1言語に比べると、第2言語でのコミュニケーションはぎこちない部分が多いと言えます。私は第2言語の話者が感じる不安や、コミュニケーションを成り立たせるために話そうと努力する心の動きについて調査、研究しています。なかでも世界中で多くの人が第2言語として使っている英語を中心に取り上げています。
外国語学部では「留学のためのコミュニケーション」や専門の英語の授業を担当しています。また共通教育としての英語の授業を担当しています。外国語を学ぶ以上、その言葉を使って世界の人々と効果的にコミュニケーションができる力を身につけてほしいというのが私の願いです。そのためには言語の能力だけでなく、相手の視点からものを見ることも必要です。また批判的に事象を捉え、自分の意見をしっかりと展開できる力を身につけることが大切だと思います。
スポーツでもファッションでも時事問題でも構わないので、「これは英語で詳しく話せる」という得意ジャンルを作ることが自信につながります。そこで授業では、興味のある分野の英文の新聞記事や雑誌の記事、書籍などをそれぞれ自由に取り上げてもらい、その内容について自分の意見を英語でまとめて発表する学習に取り組んでいます。人は本当に伝えたい相手がいて、伝えたいことがあるとき、効果的に伝える手段を磨こうとします。
「なぜ外国語を学ぶのか?」というのは、多くの人が持つ疑問だと思います。確かに日本に住んでいると、日常生活で外国語の必要性を実感できないかもしれません。しかし文法や表現、発音が全く異なる言語で自分の考えを組み立て直すことは、より多彩な視点で物事を捉え、考え、新しい発想を生み出すことにつながります。外国語の学習は、コミュニケーションツールを獲得すると同時に、「考える力」を鍛えることでもあるのです。
なかでも、英語は国際社会の共通語とも言える言語。学問においても欧米圏を中心に国際的な研究論文のほとんどは英語で書かれており、英語を介して多くの情報の収集や交流が可能です。英語を学ぶことによって、大きく広がる「知の地平」を実感してもらいたいと考えています。