第126冊 情報管理の体系的研究 ―社会レベルと組織レベルの側面から― (2001.3.31)

I 意思決定の知識過程 阿辻茂夫 研究員
II デジタル・エコノミー時代の企業経営 施 學昌 研究員
III 現代の企業経営と業績評価
―EVA経営と会計を中心として―
水野一郎 研究員
IV 連結重視時代のグループ経営 北島 治 研究員
V 資生堂のアイデンティティ・マーケティング 陶山計介 研究員
VI 都市経営情報管理への方法論的考察 山内 昭 研究員
VII 社会レベルと組織レベルにおける情報のフィルタリングに関する研究
―ITSにおける衝突回避のための車両情報のフィルタリング―
柴田 一 研究員

要約

本研究班は、社会科学と情報科学の立場から、情報管理の諸現象に対する系統的な解明を企図して組織された。ここで、研究の具体的な進展は、経営情報管理の領域を想定して行われた。それは、情報の伝播・流通の合理的な取り扱いに関わる情報管理の諸活動を、効率化を目標として編成し用いていく、応用の想定される学問分野と捉えられる。社会レベルと組織レベルにおける経営情報管理の性質を総合的に究明し、良質の情報管理のシステムの構築に展望を与えることをこの研究は目指している。

リストされた各章の論文は、上記を共通の理解に、情報化社会の先端的なテーマについて研究員それぞれの専門から解明を試みたその成果である。経営・商学・会計・社会システムに固有の経営情報管理問題の抽出と、それに基づいて、組織や社会の情報過程の理論統合を行うことからこの分野の問題解決に資せんとする学際研究がここに行われた。

第125冊 グローバリゼーション・リスクの研究II (2001.3.31)

I 情報ネットワーク社会におけるグローバリゼーションリスク
―転換期に立つB2Cに対する一考察―
王 耀鐘 研究員
II 70年代アメリカ国債市場の基本構造 池島正興 研究員
III 90年代における日米株価動向について 松谷 勉 研究員

要約

情報通信技術 (IT) 革新を原動力とするグローバリゼーションの進展によって、90年代のアメリカ経済は、市場最長の好景気と株価高騰を持続してきた。

本書では、このIT最先進国であるアメリカにおける電子商取引、特に消費者向け電子商取引 (BtoC) の生成・発展と、そのグローバリゼーションについて検討し、次いで、70年代のアメリカにおける国債の発行・流通市場とその保有構造について取りあげ、最後に、グローバリゼーションに乗りおくれ不況に喘ぐ日本と、その最先端を走り好況に沸くアメリカと、この対照的な両国の90年代における株価動向について比較検討し、日米両国の株価が、グローバリゼーション・リスクの典型ともいうべき湾岸危機・アジア危機・ロシア危機によって大きく下落したことも立証している。

第124冊 経済システム改革と会計制度II (2001.3.31)

I 21世紀の社会経済システムとシステム改革
―「現実離れ現実主義」から知恵の時代へ―
竹下公視 研究員
II イギリスのコーポレート・ガバナンス論の変遷 笹倉淳史 研究員
III 「市場化の会計学」のための論点整理 柴 健次 研究員
IV わが国企業における環境会計情報開示 松尾聿正 商学部教授
V 会計処理の変更とその背景について 小谷 融 委嘱研究員
VI 生命保険会社の財務会計制度 須田一幸 研究員
VII 有機的システムの安定性と経済 (2)
—Social System Simulator—
藤澤 等 委嘱研究員

要約

われわれ経済システム改革研究班は、平成10年度から「経済システムの変革と国際化」というテーマで研究を進めている。また研究班は、日本学術振興会平成11年度科学研究費補助金(基盤研究C)を受け、「会計制度の経済学―金融ビッグバンとディスクロージャー」という問題も併せて研究対象にしてきた。そして、平成12年に研究双書第119冊『経済システム改革と会計制度I』を刊行した。本研究双書『経済システム改革と会計制度II』は、上記の研究をさらに展開させたものである。第1に、システムの基礎理論として、21世紀の社会経済システムを展望し、コンピュータ・シミュレーションによりシステムの構造と機能を分析した。竹下論文が前者の問題を考察し、藤澤論文が後者を分析した。

第2に、コーポレート・ガバナンスと経済システムの市場化における財務会計の役割を論じた。笹倉論文は、コーポレート・ガバナンスにおける財務会計の意義を検討している。柴論文では、経済システムの市場化において会計システムがどのような役割を果たすのか、ということを考察している。

第3に、システム変革の意義と影響について実態調査をした。松尾論文は、わが国企業の環境会計情報開示を規定している要因を析出した。小谷論文は、平成12年3月決算上場会社の中で連結財務諸表に限定意見を付された507社を調査した。

第4に、会計システムはどのように改革されるべきか、ということを生命保険会社について考察した。須田論文では、保険監督当局による適切な早期是正措置の発動を可能にする財務会計システムと、証券投資意思決定に有用な情報を提供するための財務会計システムは本質的に異なり、1組の会計システムで2つの目的を同時に達成するのは困難だということを指摘した。

第123冊 人間・社会関係のダイナミクス ―ミクロからマクロまでの多角的分析― (2001.3.31)

I 人間・社会関係の基盤となる価値観
―その内容・構造の世代差,性差―
髙木 修 研究員
II 親密な人間関係の心理学的規定因についての理論と若者におけるその実際 土田昭司 研究員
III 産業組織一個人の関係とライフキャリア 川崎友嗣 研究員
IV 近隣における高齢者への援助 松井 豊・西川正之 委嘱研究員
V サービス業におけるサービス提供システム進化のための関係性構築方法 廣田俊郎 研究員
VI 新製品開発プロセスにおける上司と部下の相互作用関係 廣田俊郎 研究員
吉村泰志 大学院委託学生
VII 向社会的企業活動における市民社会との相互作用 小榑雅章 大学院委託学生
VIII 国連改革と日本 ―新たな役割を求めて― 坂元茂樹 研究員

要約

この研究班の研究目的は、世紀末から新世紀にかけて大きく変動する今日の社会における人間と人間、および、その集まりの間の「関係」の実態を、ミクロな状況からマクロな状況まで統一的に把握するとともに、そこに存在する様々な関係問題の解決に寄与するために、各状況における人間・社会関係の望ましいあり方を実証的に解明することである。このために、各研究員は、独自の関心から特定の関係問題に焦点を当てた分担研究を展開した。

本書を構成する各章は、研究員がそれぞれ2カ年に亘って行った調査、実験及び文献研究の結果に基づいてまとめられているが、それらの研究が、研究員間の緊密な協議を経て、共通の問題意識から行われた人間・社会関係の総合的研究であるため、知見は広範性、統合性、時代性を兼ね備えており、その学術的貢献はもとより現代的問題の解決への寄与も極めて大きいと期待できる。

第122冊 関西新世紀I ―大阪再生戦略の検証― (2001.3.31)

I 関西地域産業の情報戦略 (1) 野口 宏 研究員
II ネットワーク社会の大阪卸売業の構造変化
―大阪の都市機能との関連において―
津田盛之 委嘱研究員
III 大阪〜東京航空シャトル便について 高橋 望 研究員
IV 関西環境都市住工共生の環境地域づくり 和田安彦 研究員
V 大阪オリンピック招致の政治過程
―「関西活性化」と「都市デモクラシー」の問題状況―
小西秀樹 研究員
VI 児童買春処罰法と大阪府青少年健全育成条例の関係 園田 寿 研究員
VII 大阪府内の市町村合併
―地域活性化策としての法的諸課題―
池田敏雄 研究員

要約

いま、関西圏では、近年の地方分権の着実な歩みの中で、地域の自己決定に基づく魅力ある関西を取り戻そうと、多様な分野で活性化の方策が取りざたされている。とりわけ、グローバリゼーションの深化や情報通信技術の格段の進歩など大きく変化した社会経済環境のもとで、関西圏が新たなチャンスを生かすための戦略が求められているところである。

大阪問題研究班は、21世紀を迎えて、各方面にわたる関西圏の活性化の可能性をどのように導くべきかを共通の研究テーマとして、研究員各自が関心領域について研究を進めている。その研究領域は、地域産業の情報戦略、流通活性化策から航空政策、環境地域づくり、オリンピック誘致の政治過程、犯罪事情と青少年健全育成策、市町村合併と行政課題、と多様かつ多角的である。

本双書は、2ヵ年の研究期間を経過するに当たり、研究員各自が関西活性化を加速させる一助となることを期待して、これまでに研究報告した内容を取りまとめた中間報告書である。

第121冊 多元的経済社会の諸問題 (2001.3.31)

I グローバリゼーション時代における経済的自由・統治・市民権
―多元的経済社会の可能性―
若森章孝 研究員
II グローバルな歴史認識の成立
―「世界史」と普遍的発展段階論の問題性―
植村邦彦 研究員
III コンドラチェフの再評価と長期景気波動論
―コンドラチェフの理論的遺産と現代―
岡田光正 委嘱研究員
IV 世界システムにおける成人教育の分析視角
―F. ヤングマンの所論との関連で―
赤尾勝己 研究員
V ヨーロッパ統合の現状とユーロについて 楠 貞義 研究員
VI 自動車業界のグローバル統合と資本提携 井上昭一 研究員
VII 北朝鮮の90年代食糧危機および飢饉問題の再検討
―難民問題を通してみた本質的諸問題―
李 英 和 研究員
VIII 戦後台湾の経済構造と中台経済 ―中小企業と対中投資― 石田 浩 研究員

要約

国境を超える効率性を追求するグローバリゼーションは、雇用や環境に関して「効率と公平のジレンマ」を引き起こしているだけでなく、国境を超えた世界経済として成立する経済が国民国家に支えられねばならないというジレンマや経済的自由の追求と共和主義的民主主義(共通の事柄の決定と討論への参加)とのジレンマといった、人類の近代が内包するジレンマを端的に明るみに出している。グローバリゼーションは、近代のジレンマの解決策ではなく、解決されるべき諸問題を生みだしているにすぎない。近代の歴史は今日、けっして「終焉」を迎えてはいないのである。この双書は、グローバリゼーションが生み出す諸問題(グローバリゼーション・プロブレム)を「多元的経済社会の形成に通じる諸問題」として読み替えることによって、21世紀の経済社会とグローバリゼーションの行方に新しい理解をあたえるような8本の論文から構成されている。