関西大学 大学院インフォメーション2018
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03クラウド、AIの時代に、世界を変える ヒューマンマシンインターフェイス関西大学の研究力● 軽くて、透明で、丸めたり伸ばしたりできる透明なフィルム。この何の変哲もないフィルムを構成する高分子が圧電性(誘電体に応力や歪を与えると、電荷や電圧が発生する現象)を示すことで、全く新しいタイプのヒューマンマシンインターフェイス(HMI)を実現します。この圧電性高分子は、汎用高分子の中では珍しく、DNA分子で有名な螺旋状の構造となっており、この螺旋構造に圧力を加えると、分子が変位し、電気が発生します。つまり、このフィルムを曲げたりねじったりすることで電圧が起きるので、センシングが可能となり、その直観的な動きを反映するHMIとなります。研究室が三井化学株式会社と共同で開発したこの透明な圧電高分子フィルムを活用して、株式会社村田製作所が世界を震撼させた「リーフグリップリモコン」、「押圧タッチパネル」を開発しました。この成果は、英国BBC放送、米国CBS放送で広く世界中に配信され、平成28年度文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)受賞を導きました。● 無機物である圧電セラミックスは、センサなどに信頼性の高いデバイスとして広く工業的に使われてきました。最近では圧電セラミックスをタッチパネルなどに使う試みが長く続けられてきましたが、成功していませんでした。これは圧電セラミックスには焦電性(温度が変化すると電気が発生する現象)があるため、人の体温による温度変化と、変位による圧電性信号との区別が付かず、誤作動となることが原因であり、この誤作動を起こさない非焦電性の圧電性高分子の存在も早くから知られていたものの、発生する電圧が、セラミックスの30分の1以下と低すぎたため実用に至りませんでした。一方、我々の研究室では、高分子の分子運動に立ち返り、解析を進め、センシング感度に優れた透明度の高いフィルムを創造する研究を、20数年取り組み続けてきました。その成果と圧電性高分子の持つ柔軟性、軽量 性、透明性が、i-Phone等に始まったスマートフォン 関連の技術と融合し、今実用化の道を開いたのです。● 高分子は繊維素材となると機能が拡充します。我々は圧電性高分子の繊維化に挑戦してきましたが、繊維化したときに、圧電性を持つ高分子を量産することは決して簡単ではありません。理想的な生産条件にたどり着くため、帝人株式会社と長い年月をかけ、共同研究を重ねてきた結果、圧電性高分子の繊維化に成功し、圧電ファブリック(生地)を実現できました。この素材を使って仕立てた洋服を着ると、その人の動きをそのままロボットに伝えて動かすことが可能になります。例えば、名医の手術技術をロボットに教え込むことや、スポーツにおけるコーチングなど、さまざまな分野で人類の発展に大いなる可能性をもたらします。圧電ファブリックは、TV東京ワールドビジネスサテライト(WBS)において2015年「年間トレたま大賞 優秀賞」を受賞しました。● 2017年1月、我々は圧電性高分子繊維を、伝統工芸の技術を活用し、組みひも状にした圧電組紐を実現しました。さらに、組みひもを模様のように結び合わせた「飾り結び」にすれば、結び目や交差した部分から圧力を電気信号として読み取り、体のさまざまな運動の中で、今必要な動きのみをとらえることができることを世界に先駆け示しました。この手法を使うことで、例えば、歩く大きな運動に邪魔されずに血液の流れ(脈動)が、複雑な回路、プログラムを用いることなく、センシングできます。これは、NHK Worldニュースで世界に発信されました。飾り結びは基本的なものだけでも80種類以上あり、数学的な解析や有限要素法計算を活用すれば、使い方に最適な結び方をはじき出せます。アクセサリやキーホルダそのものがセンサになることで、革新的なIoT関連のデバイスを実現し、クラウドサービスに必要な良質な情報を提供できます。さらに一方では、自動運転、介護、医療機器、ロボットなどさまざまな用途での活用が期待されています。魔法のように電圧を発生させる 透明フィルム地道な基礎研究の継続が圧電性高分子を進化させ、時代が脚光を浴びせる文字通り“着る”wearableセンサへの道を拓く圧電ファブリックIoTに相応しい革新的なセンサを 実現する伝統工芸技術を利用した 飾り結び圧電組紐理工学研究科 システム理工学専攻   田實 佳郎 教授1980年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了、理学博士。山形大学助教授を経て、2004年本学工学部教授。システム理工学部副学部長、社会連携部知財センター長などを務め、現在、システム理工学部長。学会活動:欧文誌JJAP editor、静電気学会理事などを歴任。受賞:米国電気電子学会(IEEE)James R Melcher Prize Paper Award 2008。平成28年度文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)など。Tajitsu Yoshiro◆研究室紹介計測物性工学研究室の提案は「創成物性工学 Creative Materials Engineering」。今後の物性工学の研究は、金属、半導体、結晶、セラミック、高分子、液晶、生体分子、複合体などの境界が次第に薄れて、複合化総合化が進むことは必至です。本研究室では、物質の性質をそれを構成するミクロな粒子から解き明かす物性物理学に基礎を置き、物理的手法に留まらず化学的な手法までを駆使し、新しい機能を生む材料の創生を計ります。この機能をセンサ、アクチュエータ素子として具現化し、第四次産業革命と謂われる現在に相応しいシステムの実現をめざします。

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