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【講演報告】11/18(火) 客員教授 大須賀 英郎 氏による講演会を開催しました
2025年11月18日、関西大学高槻ミューズキャンパスにて、大須賀英郎氏を講師に迎え、「船舶事故調査史とヒューマンファクター・組織論・安全文化」をテーマとする講演会が開催されました。今回は船舶事故調査制度に関わる解説に加え、「コンプライアンス」の視点から組織の安全管理を捉え直す点に焦点が当てられました。大須賀氏は、日本の海難審判制度が個人の過失に焦点を当てる"法律モデル"として発展してきた一方、国際的にはシステム全体の脆弱性を探る"システムモデル"が主流になっていると説明されました。IMOコードの採択によって調査と懲戒の分離が求められた経緯や、ヒューマンファクター研究の進展も紹介され、現代的な事故調査のあり方が示されました。
さらに大須賀氏は、2000年代に整備された内部統制関連法や運輸安全マネジメント制度に触れられました。両制度はいずれも組織が自律的にリスクを把握し、PDCAサイクルを回して事故や不祥事の未然防止を図る点で共通します。さらに運輸安全マネジメント制度は、ルールが守られなかった際には「なぜ実行できなかったのか」という組織的背景を見極め、現状にそぐわなくなった手順は見直すという姿勢こそ重要であり、法令遵守を超えたリスクの発見と対処が求められると述べられました。また、知床観光船KAZUⅠ事故の調査事例も取り上げられ、運航管理体制の不備や組織文化の弱さが複合的に事故を深刻化させた点が示されました。
最後に大須賀氏は、事故調査と安全研究の分野において、本学との深い関わりにも言及されました。安部誠治名誉教授が国土交通省の知床遊覧船事故対策検討委員会に、また岡本満喜子准教授がKAZUⅠ事故の調査委員会に参画されたことを紹介し、これらの取り組みが安全文化の形成に大きく寄与していると説明されました。さらに、福知山線列車脱線事故調査に関わる不祥事問題の検証が過去に本キャンパスで実施された経緯にも触れ、大学が社会の課題に向き合い、その知見を共有してきた積み重ねを示されました。こうした事例を踏まえ、大須賀氏は、本学で「安全」や「コンプライアンス」について学ぶことには実社会との接点が多く、社会的意義を理解しながら学修を深められる環境であることと強調されました。本講演は、参加者にとって、学びと社会が結びつく場としての大学の役割を改めて認識する機会となりました。

