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【講演報告】6/3(火) 客員教授 大須賀 英郎 氏による講演会を開催しました
6/3(火)高槻ミューズキャンパスにおいて「船舶事故調査史から見る事故調査の根本問題」と題して、公益財団法人海事センター参与の大須賀 英郎 氏による講演会が開催されました。
大須賀氏は、本研究科博士課程後期課程を2020年3月に修了されており、指導教員であった安部誠治先生との出会いを含めて、ご自身の研究の出発点を冒頭に紹介されました。わが国で海難事故の調査の中核を担ってきた海難審判制度の成立から廃止に至る歴史をたどりながら、同制度が事故の再発防止よりも懲戒に重点を置いてきた構造的問題を踏まえ、2008年の運輸安全委員会設立に至るまでの制度改革の経緯とその意義を、詳細に論じられました。
講義では、日本と諸外国の事故調査制度の違いについても解説がありました。例えば、1954年の洞爺丸事故の調査において、出航を判断した船長と国鉄の過失に焦点が当てられた一方で、気象条件や船体構造に関する工学的分析は軽視され、背景要因の掘り下げが不足していた点が問題視されることの解説がありました。
これに対し、1912年のタイタニック号沈没事故に対するイギリスの調査では、事故の直接原因だけでなく、船体構造や救命設備の不備、航行上の安全対策の不備まで多角的に分析され、24項目にわたる具体的な勧告が発出されたとされています。
このように、責任追及を目的とする日本の旧制度と、再発防止のための教訓抽出を重視する諸外国の制度との違いが浮き彫りとなり、現代的な事故調査の理想像がいかにして形成されてきたのかが示されました。
本講演は、事故調査の本質とは何かを問い直す貴重な機会であり、政策研究・安全保障・制度設計に関心のある学生、教職員にとって、制度変革の現場を担った実務家による極めて貴重な知見の共有の場となりました。