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【関大社会安全学部 リレーコラム】後手に回るインフラ管理 早急に
1月28日に埼玉県八潮市の県道の交差点で道路が陥没し、トラックが転落するという事故が発生しました。本原稿の執筆時点においても、トラックの運転手の救出は難航し、現場の復旧の見通しは全く立っていない状況です。また、周辺の自治体においても、下水道の使用が制限されるなど、不自由な生活を強いられています。一刻も早いトラックの運転手の救出と現場の復旧をお祈り申し上げます。
今回の道路陥没ですが、地中深部の老朽化した下水道管が破損し、そこへ土砂が流入することで発生した空洞が地表面付近にまで拡大し、最終的に地盤が交通荷重などに耐えられなくなって発生したとされています。「令和5年度下水道管路メンテナンス年報」(国土交通省)によると、下水道管路に起因する道路陥没は、4年度に全国で約2600件発生しており、そのほとんどが陥没深さ50センチ未満の規模が小さいものでした。
今回のような陥没深さが10メートルにもおよぶ大規模な道路陥没は想像をはるかに超えるものだったといえます。とはいえ、周辺の地下水が空洞拡大に与えた影響や道路陥没の予兆、さらには最悪の事態を回避する術はなかったのかなど、今後、専門家の詳細な調査・分析を待ちたいと思います。
下水管路に限らず、多くが高度経済成長期に建設され、老朽化が進むインフラの維持管理の現場では、点検技術者の不足に加え、予算の確保も難しく、現状、特に問題がないのであれば、今やる必要はないということで、対策が後手に回ってしまっています。
大きな事象が発生してから事後的に何か対策を立てるのではなく、日常から頻度を上げて点検・監視をし、大きな事象が発生する前に日常とは異なる小さな異変を早期に察知して対処する「予防保全」が重要です。また、そのためには、点検の省人・省力化のための低コストなインフラ点検・計測技術の開発と実装を早急に進めていかなければなりません。(関西大学社会安全学部教授 小山倫史)(2025-02-17・大阪夕刊・国際・3社掲載)