【関大社会安全学部 リレーコラム】防災にも定量的議論を

5月の連休に京都のキャンプ場で地震を感じました。その直前には、勤務する大学がある高槻(大阪府)でも地震を感じました。それぞれは小さな揺れでも、何度も感じるといろいろ不安になりますね。
このような小地震が大地震の前兆かどうかは分かりません。たまたま、大地震の前に前震として小さな地震が起きている場合もありますが、小さな地震がありながら何事もなかったことも数多くあります。
大地震の後(あるいは地震が起きなかった後)は、あれこれと説明をつけることができても、事前には何も評価できない、というのが現在の技術レベルだと思います。
これらの地震では、行きつけの飲み屋で、地震兵器の開発ではないかという質問を受けました。聞くと、地震兵器に関連し、平成23年の国会答弁に「地震あるいは津波を人工的に起こすということは実は技術的には十分可能」というものがあります。思わず国会と飲み屋での議論が同レベルか、と衝撃を受けました。
車両の通行や建設工事の振動には、時に非常に大きなものがあり、住宅などが損傷することがあります。その意味では、これらも(極小)地震とみなすことができ、この答弁は間違っていません。しかし、最近感じたような地震は小型の核兵器クラスのエネルギーです。同様に議論できるものであるとは思えません。
たまたま生じた事例を一般的な傾向として誤解したり、規模の小さな事例で大規模な事例も説明しようとしたりすることは、よく起こしやすい間違いだと思います。物事を定量的にとらえて議論するという姿勢を持つことが大事ですね。
(関西大学社会安全学部教授 一井康二)(2022-05-16・大阪夕刊・国際・3社掲載)