【関大社会安全学部 リレーコラム】時代に対応した人材育成を

今月で東日本大震災から10年になりました。新聞やテレビでも10年前を振り返る特集などがあり、興味深く拝見しています。
私が学生の時、「大学で学んだ知識は10年もたてば役に立たない」と教わりました。この教えの趣旨は、知識ではなく、考え方が大事であるということです。ただ、学生の時の私には10年でそれほどの変化があるとは想像できませんでした。
しかし、10年前の東日本大震災当時と現在を比較すると、やはり大きな変化がいくつもありました。例えば、スマートフォンの普及がこの10年で大きく進んでいます。携帯電話が普及していなかった兵庫県南部地震(阪神大震災)時と現在の災害対応の実情が異なるように、東日本大震災時と異なり、現在はスマートフォンの利用を念頭に置いた防災対策に変化しつつあると思います。
変化の速度を考えてみると、情報通信分野は最も変化が速いといえます。携帯電話が数年ごとに機種更新されることも変化が速い要因でしょう。一方で、構造物の耐震補強などは時間がかかります。
このとき、変化に最も時間がかかるのは、実は人間なのではないかと思います。例えば、私は避難誘導アプリなどの最新技術を使いこなせている気がしません。時代の変化に対応して、新しい防災の形を実現できる人材の育成こそが、時間はかかるでしょうが、継続して取り組むべき課題であるといえます。
ちなみに、社会安全学部も設立から10年がたちました。これからもご支援をよろしくお願いします。
(関西大学社会安全学部教授 一井康二)(2021-03-15・大阪夕刊・夕刊特集掲載)