【関大社会安全学部 リレーコラム】避難場所に空き家活用案

新型コロナウイルスを考慮する形で、防災対策もいろいろと見直しがなされています。例えば、社会安全学部のある関西大学高槻ミューズキャンパスは、災害時の一時的な避難場所として地元の方に活用していただけるようになっているのですが、感染防止に配慮して収容人数の見直しなども検討しています。
避難所の定員が減ったこともあり、今年の台風10号の災害では避難所の定員超過が実際に発生したと報道されています。報道からは、一時的に身の安全を確保する避難場所の話なのか、一定期間の避難生活となる避難所の話なのか、正確なところはよくわからないのですが、いずれにせよ問題であることは確かです。
このような状況では、様々な工夫が必要となります。
例えば、日本には800万戸を超える空き家があります。その半数強は賃貸用もしくは売却用なのですが、長期にわたって居住者が不在だったり、取り壊す予定だったりする住宅も300万戸ほどあるようです。このような住宅は地方に偏在しているように思いますが、都市部にもそれなりに存在するようです。
更地にすると固定資産税が高くなるので、空き家のままの住宅も多いようです。そうであれば、災害時に避難場所や避難所として利用するという協定を行政と所有者が結ぶことで、常時の管理を行政が手伝うなど、何らかの工夫もできそうです。取り壊す予定の家屋であっても、復旧作業時の仮置き場などの活用ができると思います。
行政と住民がWinWin(ウィンウィン)の関係となれるような、いろいろな工夫を模索していくことが必要だと思います。
(関西大学社会安全学部教授 一井康二)(2020-12-21・大阪夕刊・夕刊特集掲載)