【関大社会安全学部 リレーコラム】気象予測 データ評価し対策に

今年(令和2年)も、昨年と同様に7月に活発な梅雨前線の活動に伴う集中豪雨があり、九州、中国、中部、東北地方を中心に甚大な被害が発生しました。一方、台風についてみてみると、本原稿執筆時点で、発生数は例年よりやや少ない数で推移していますが、日本列島に接近した台風の数は7個、上陸した台風はゼロとなっており、このまま上陸する台風がなければ平成20年以来ということになります。
昨年は、15個の台風が日本列島に接近し、そのうち5つが上陸しました。特に、昨年10月に襲来した台風19号は東日本および東北地方に記録的な豪雨をもたらし、甚大な被害を与えました。また、28年のように、日本列島に接近した11個の台風のうち、6個が上陸し、北海道に3個の台風(7、9、11号)が上陸した年もあります。
今年、上陸した台風はなく、台風による被害も比較的小さかったとはいえ、9月に九州地方に接近した台風10号は、一時「大型で非常に強い」台風となり、過去最強クラス(中心気圧が920ヘクトパスカル、最大瞬間風速80メートル)といわれ、特別警報の発表も予想されていました。実際に日本列島に接近した際には、勢力が衰えたため、特別警報の発令には至らず、幸いにも予測が良い方向に外れたといえます。後に「発表が大げさだったのではないか」ということが議論になりましたが、もし、勢力が衰えず、東寄りのコースをたどっていれば、甚大な被害が出ていた可能性もあります。
近年、地球温暖化に起因するとされる極端な気象現象が指摘されており、これまで想像もしていなかったような事象が発生する可能性もあります。気象予測の精度は向上していますが、長期予測については、依然として課題もあります。予測の当たり・外れで一喜一憂するのではなく、収集したデータを定量的に評価して効果的な対策に繋げる必要があります。
(関西大学社会安全学部教授 小山倫史)(2020-11-16・大阪夕刊・夕刊特集掲載)