【関大社会安全学部 リレーコラム】災害は社会の変化促す力

緊急事態宣言が一部の地域で解除になりました。しかし、ワクチンや特効薬もなく、「3密」を避けるなどの対策が必要な期間は、かなりの長丁場になりそうです。諸外国で、外出制限の緩和直後に再度クラスターが発生した事例もあり、覚悟が必要な感じです。
短期間で以前の状態に戻ることが期待しにくい以上、事態が長期化することを前提とした対応が必要となります。大学でも、当初は講義を休んでましたが、いつまでも休講にはできず、オンライン講義などで再開されました。
これまでも留学中の学生とのやり取りなどに、ビデオ会議がよく活用されています。さすがに全学的に同時に取り組むと、サーバーに負荷がかかって反応が遅くなるなどの問題も生じましたが、徐々に改善されています。また、オンライン講義は短所ばかりではなく、画面の保存機能などのメリットもあります。
こうして大学の講義形態も変化し、新しい生活様式を形作ることになるのでしょう。小中学校でのオンライン授業の導入も、いろいろ課題は残されていますが、これも近いうちに解決され、教育システムも大きく変化していくと思います。
これまで、ITが進化しても、それだけでは全体としての変化にはあまり直結しませんでした。しかし、今回のように外からの大きな力があると、一気に変化が加速されるということだと思います。新型コロナウイルスも、疫病という災害の一つであり、災害は社会の変化を促す大きな力であるといえます。
言い換えれば、「災害でやむなく」という形だと社会は変わります。できれば、被害を伴う災害の発生前に社会が自ら変化できるといいのですが。われわれが本質的に成長すべき点はそこかもしれません。
(関西大学社会安全学部教授 一井康二)(2020-05-18・大阪夕刊・夕刊特集掲載)